大王朝が沈みゆく時、人々は美とエロスと死の気配に溺れた――。
19世紀末のオーストリア・ウィーンは、黄昏時の美しさに輝いていた。勤勉な皇帝フランツ・ヨーゼフと美貌の皇后エリザベートの人気は高く、街は都会的に改造され、カフェが賑わい、文化芸術が開花。しかし数十年後、ハプスブルク家は「死の連続」に見舞われ、大王朝は消滅する。
人々は崩壊の予兆にも怯えながらそれに目をそむけてワルツに興じ、エロスと死に満ちた絵画や小説に傾倒せずにおれなかった。そうした時代の申し子であるクリムトと、同時代画家たちの絵画から「良き時代の終末」を読み解く。
クリムト、シーレ、ヴィンターハルターら42点の名画と“ウィーン激動の時代”がスリリングに交錯する絵画エッセイ!
絵画はすべてオールカラー、高品質印刷ですみずみまで美しく。
「本書は、時代の必然のように登場した画家とその地の世相や事件を、できる限り多面的に捉えようとする試みです」(あとがきより)
延命成功/ウィーン大改造/マカルトとクリムト/エリザベート美貌最盛期/エロス/カフェ文化/女性騎手とデザイナー/音楽と市民の娯楽/死の連続性/ユダヤ人/一九〇〇年パリ万博/問題児シーレ/恋愛と結婚/怒濤の時代/終焉
……15の章で「名画」と「歴史」と「人間」を読み解く。
大好評『中野京子と読み解く フェルメールとオランダ黄金時代』に続く、《名画×西洋史シリーズ》最新作!
中野京子と読み解く クリムトと黄昏のハプスブルク 目次
◆延命成功
クリムト『接吻』
シュティーラー『ゾフィー大公妃と長男フランツ・ヨーゼフ』
ミクローシュ『フランツ・ヨーゼフ一世』
◆ウィーン大改造
クリーフーバー『エリザベート皇后と子どもたち』
クリムト『旧ブルク劇場の観客席』
◆マカルトとクリムト
マカルト『カール五世のアントワープ入城』
クリムト『シェークスピア劇場』
◆エリザベート美貌最盛期
ヴィンターハルター『オーストリア皇妃エリザベート』
シンケル『モーツァルト魔笛の舞台セット』
ヴァルトミュラー『ウィーンのマクダレーネングリュントの物乞いの少年』
◆エロス
バイロス『かわいいカタツムリ』
クリムト『医学』(部分) 『ダナエ』
◆カフェ文化
フェルケル『カフェ・グリーンシュタイドル』
クリムト『ベートーヴェン・フリーズ』(部分)
◆女性騎手とデザイナー
アトキンソン『馬でハードルを越えるエリザベート皇后』
クリムト『エミーリエ・フレーゲの肖像』
◆音楽と市民の娯楽
クリムト『ピアノを弾くシューベルト』
ブラウ『プラーターの春』
◆死の連続性
アルト『気球から見たウィーン南西部』
マネ『マクシミリアンの処刑』
アンゲリ『金羊毛騎士団章を付けた海軍士官服姿のルドルフ皇太子』
◆ユダヤ人
クリムト『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ』
デルーク『市長鎖をつけたカール・ルエーガーⅠ』
◆一九〇〇年パリ万博
クリムト『パラス・アテナ』『哲学』(部分)『罌け粟し の野』
ホドラー『夜』
◆問題児シーレ
シーレ『毛皮の襟巻をしたマリア・シーレ』『着席した男性のヌード(自画像)』
クリムト『ヌーダ・ヴェリタス』
◆恋愛と結婚
クリムト『希望Ⅰ』
シーレ『死と乙女』
◆怒濤の時代
ガウゼ『一九〇〇年のウィーン宮廷舞踏会』
クリムト『死と生』
◆終焉
クリムト『マフの貴婦人』
シーレ『家族』
※地図、年表、ハプスブルク家略系図付き
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