作品紹介

〝歴史探偵〟と自らを称した半藤一利は、共著も含めれば100冊近い書物を遺しました。書籍化されていない雑誌記事を含めれば、その仕事量はじつに膨大です。
半藤を比類のない存在にならしめたのは、資料探索による無尽蔵の知識と取材による見聞の双方から成る蓄積といえます。氏の仕事をさらに価値あるものにしているのは、そうした莫大な蓄積を土台にした上で、史料の裏側を読む確かな視点があったからだと思われます。史料の裏側を読むとは、人の心理を読むことでもありましょう。なぜなら、本人も言うように、「歴史とは人間学」だからです。
だからこそ、半藤の人物評、つまり月旦は面白いのです。
今回、本書を編むにあたって、半藤が人物を評している部分にスポットを当てました。
人物は昭和史を彩る人物たちに限りました。とはいえ、軍人と政治家についての言及がほとんどを占めています。
これらの軍人と政治家は日本の歴史を動かしたキーパーソンです。
したがって、本書を一読すれば歴史が大づかみでわかるようになっています。また、当時の国民の空気や熱が背中を押すものとしてあったにしても、歴史を一歩前に進めたのは、どの場面でもごく少数の人たちであったことがわかります。
良い例をあげれば、鈴木貫太郎と昭和天皇の阿吽の呼吸がなければ太平洋戦争は確実に延びていたし、日本の被害は拡大していたでしょう。逆に、悪い例として歴史の「if」を言うなら、近衛文麿、伏見宮博恭王、東条英機、永野修身、松岡洋右らがあの時あのポジションに就いていなければ、日中戦争や太平洋戦争も起きなかったのかもしれません。
それはさておき、とりわけ戦争という異常な状況において、人は正体をさらけ出します。その人間模様は、さまざまな示唆に富んでいます。それはまた現代のビジネスパーソンの戦いの場にも通じる普遍的な人間の姿ともいえるでしょう。

目次
第一章 卓抜な軍人たち 陸軍篇  
■永田鉄山 陸軍八十年の歴史で一、二に指を屈する大秀才 
■石原莞爾 昭和陸軍最高の天才にして満洲事変の首謀者 
■板垣征四郎/石原莞爾 満洲事変を演出した片や胆力、片や知謀のコンビ
■今村均 戦犯裁判で裁判官までが味方した陸軍最高の人格者
■山下奉文 世界を驚嘆せしめた“マレーの虎”
■山下奉文/武藤章 〝敗軍の将〟と決し責任を死で償った将軍
■中川州男 米軍を苦しめ続けたペリリュー島の雄 
■栗林忠道 硫黄島で孤軍奮闘した英雄 
■宮崎繁三郎 連戦連勝の猛将にして温情の将軍 
■阿南惟幾 最後まで陸相の責を務めて切腹した天皇の忠臣 
【米国軍人篇】
■ダグラス・マッカーサー 日本人を知り尽くした戦略の天才
 
第二章 卓抜な軍人たち 海軍篇  
■米内光政 日本を終戦に導いた昭和海軍の救い手 
■井上成美 大局観に優れた一徹者 
■山本五十六 先が見えすぎた悲劇の連合艦隊司令長官 
■堀悌吉 海軍始まって以来の英才 
■小沢治三郎 魚雷で世界を震撼させた司令長官 
■田中頼三 アメリカ巡洋艦隊を壊滅させた闘将 
■木村昌福 キスカ島から無血撤退を成功させた猛将 
■伊藤整一 戦艦「大和」と心中した司令長官 
【米国軍人篇】
■アーネスト・キング 人材登用に長けた最高指揮官 

第三章 残念な軍人たち 陸軍篇  
■本庄繁 陸軍をダメにした先駆者 
■東條英機 昭和陸軍の矛盾が集約された最高責任者 
■東條英機/嶋田繁太郎(海軍) 片や傲慢、片や優柔不断、最悪のトップコンビ 
■服部卓四郎/辻政信 膨大な数の日本兵を無駄死にさせた最悪のコンビ 
■服部卓四郎 デマを流して部内工作をする策士 
■辻政信 反省の「は」の字もない大噓つき 
■牟田口廉也 日中戦争を起こしインパール作戦を指揮した無責任の代表格 
■杉山元 天皇の信頼薄い〝三等重役〟 
■瀬島龍三 シベリア抑留について死ぬまで明かさなかった大本営参謀 

第四章 残念な軍人たち 海軍篇  
■末次信正 「統帥権干犯」問題の仕掛け人 
■伏見宮博恭王 半藤が海軍でもっとも責任が重いと断ずる皇族軍人 
■及川古志郎 対英米開戦路線を進めた無責任男 
■嶋田繁太郎 艦長に艦とともに死ぬことを強いた東條の男メカケ 
■石川信吾 対米戦に突き進んだ危険極まりない人物 
■永野修身 陸軍と競って主戦論をぶちあげた「グッタリ大将」 
■栗田健男 戦意乏しくあらぬ方向へ走る弱腰の提督 
■源田実 優秀なれど危険な人物 

第五章 その他の軍人たち 陸軍篇  
■宇垣一成 勝ち馬に乗る処世術の士 
■荒木貞夫 皇道派の頭目に祭り上げられた軍国主義者 
■下村定 責任を率直に認めた最後の陸軍大臣 
■朝枝繁春 終戦時に大本営にいた参謀 
■吉松喜三 戦中戦後に中国で四百万本の苗木を植えた「緑の連隊長」 
■三波春夫 「お客様は神様です」で知られるシベリア抑留兵 
■加東大介 激戦地で劇を演じ続けた軍曹 

第六章 その他の軍人たち 海軍篇  
■大西瀧治郎 「特攻の生みの親」という汚名を着せられた海軍中将 
■田辺弥八/長谷川稔 米艦に致命傷を与えた二人の潜水艦長 
■玉井浅一 戦後、坊さんになった特攻の指揮官 
■吉見信一 戦後、医者になった司令官 

第七章 政治家と官僚たち
■石橋湛山 軍部ともGHQとも対立した気骨の人 
■田中義一 天皇の不興を買った首相 
■西園寺公望 昭和期で唯一の元老 
■高橋是清 世界恐慌後の日本を救った名蔵相 
■近衛文麿 恐れも洞察も責任も希薄な指導者 
■松岡洋右 たった一人で政府を引っかき回した外務大臣 
■木戸幸一 天皇の決定すらも左右できた側近中の側近 
■鈴木貫太郎 終戦を決定づけた満身創痍の名宰相 
■南原繁 和平への道を必死に工作した東大教授 
■吉田茂 戦後日本のあり方を決めたワンマン首相 
■寺崎太郎 気骨ある官僚その① 
■下村治/大来佐武郎 気骨ある官僚その② 
【海外の政治家篇】
■ウィンストン・チャーチル 第二次世界大戦で国を鼓舞し続けた名宰相 
■シャルル・ド・ゴール 連合国に向けて「ノン」を言い続けた将軍 
■毛沢東 革命を成就したあとは尊大な独裁者 
■蒋介石 アジアの代表的な反共政治家 
■アドルフ・ヒトラー/ヨシフ・スターリン 二十世紀が生んだ悪魔たち 
■ヨシフ・スターリン ひがみっぽく偏執狂的な独裁者 

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