書名(カナ) | アキラメナイオトコ ジュウドショウガイヲオッタイシ ハラダライタロウ |
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ページ数 | 200ページ |
判型・造本・装丁 | 四六判 軽装 並製カバー装 |
初版奥付日 | 2022年04月25日 |
ISBN | 978-4-16-391535-7 |
Cコード | 0095 |
新潟県上越市にある介護老人健康施設「サンクス米山」で施設長を務める医師がいる。原田雷太郎。今年還暦を迎える内科医だ。彼は約100人いる入居者の健康管理を一手に引き受けている。地方にある老健施設の入居者は、持病や認知症の度合いが強い人が多い。また、退所して家族の元に帰る人も少なく、施設で看取られるケースが多いという。そういう環境のなか、一人ひとりの様々な状況を把握し、健康な日常、幸せな最期を迎えられるように、原田は毎日、真摯に患者と向き合う。
これだけ聞くと、やさしい真面目な普通のお医者さん像が浮かぶ。たしかに原田は真面目でやさしいお医者さんだ。ある一点を除いては……。
原田は13年前、46歳のとき、持病である糖尿病の合併症で突然意識を失い、自宅の階段から転落する。その結果、脊椎を損傷し、首から下が動かなくなる。わずかに動くのは右手の人差し指と親指だけという重度障害者となったのだ。今でも原田の首から下は動くことはない。
普通なら、原田のほうが障害者施設に入所し、一生、寝たきりで暮らすはずだった。しかし、原田は「あきらめなかった」。原田は、重度の障害を負っても、社会人として生きること、そして、医師として生きることをあきらめなかった。幸いないことに、頭脳の機能は失われなかった。昔と違って、失われた身体の機能をサポートしてくれるテクノロジーはかなり進歩している。ハイテクの車いす、ノートパソコンなどを駆使すれば、内科医として生きていくことは可能なはずだ。
原田は苦しいリハビリを乗り越え、医師として現場に復帰する。もちろん、介助は必要だ。ベッドから車いすに移るだけでも3人の力が要る。そうした援助には深い感謝の気持ちを持っている。しかし、患者さんにとってもっともよき医師となっている。これは奇跡の物語ではない。また、障害者と社会といった大きなテーマを扱ったものでもない。「あきらめない男」の努力のドキュメントなのだ。
まえがき
第一章 日常
いつも通りの朝/ルーティーン/医師としての一日のはじまり/「ありがとうございます」/老健施設の実情/硬めのご飯が食べたい/回診/「先生よぉ、俺はなあ、今日死ぬんだよ」/「断る」ではなく「考えてみる」/心から思う/「書く」ことのむずかしさ/「死」との距離感/署名/休日の楽しみは「飲酒」/「いい時代に障害者になった」/「これで朝まで時が止まらない」
第二章 事故
楽天家でも厭世家でも/進路を決めた「赤い疑惑」/医学生というより野球部員/目指したのは「普通の医者」/お前が選んだ人なら大丈夫/幸せな暮らし/劇症Ⅰ型糖尿病/「しんどい」と言わない/事故/「今日は八尾のお祭りだね」/口から食べられるはず/「寝たきり」と「職場復帰」の間/親友との再会/医師復帰/仲間が動いた/運のいい男
第三章 信条
東京五輪・パラリンピック/自分でできることは自分でする/「カエルと同じですわ」/つらい時には『坂の上の雲』を読む/読書/家族/子どもたちの成長/自転車に貼られたメッセージ/「いつ死んでもいい」/ストレスがある幸せ/医療の落とし穴/雇用される側の務め/「死に近い者」/信仰
第四章 現在
再会/原田の日常に同行する/職場で「痛い」と絶対に言わない/障害者としての現実/カップラーメン/寿司と酒/大きな喜び/松田聖子と「軍艦」/彼女のすべてを愛しています/娑婆に出る機会/「マイ・ラッキー・ライフ」/医師としてコロナと戦う/ワクチン接種と医師の責任/これが原田という男だ
あとがき
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