書名(カナ) | オリンピック マネー |
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ページ数 | 224ページ |
判型・造本・装丁 | 新書判 |
初版奥付日 | 2020年04月20日 |
ISBN | 978-4-16-661249-9 |
Cコード | 0295 |
新型コロナウイルスの流行で、迷走に迷走を重ねた挙句、東京オリンピックの延期が決定した。国際オリンピック委員会(IOC)がぎりぎりまで延期を口にしなかったのは、秋になるとアメリカでアメリカン・フットボールやバスケットといった人気スポーツが始まるので、テレビ局の放送日程がとれないからだという。
こんなバカな話があるか。オリンピックは世界中の国が集まって行う「スポーツの祭典」「平和の祭典」であり、そのため開催国では巨額の税金を注ぎ込む。それがアメリカのテレビ局の都合で左右されていいのか。マラソンの札幌移転も、東京で涼しい時間帯(未明スタート)に開催しても、暗くてはテレビ中継ができないからだというのだ。
なぜ、こんなことになってしまったのか。本書は、オリンピックが「スポーツの祭典」から、単なる巨大なスポーツ興行へと変わってしまった軌跡を丹念に追う。とくにテレビの放送権料という金の卵を産む鶏の存在が、IOCをいかに変えたのかを検証する。
では、開催国の日本は一方的な被害者なのか。そんなことはない。
オリンピックを錦の御旗に、あらゆる強引な手法が駆使された結果、東京都心で最後に残った閑静な地域、神宮外苑は再開発されることになった。その巨大な利権に群がったのは誰か。再開発地域にあった都営アパートは取り壊され、長年住んできた住民たちは移転させられた。「国策に協力する」という名目で……。
しかし、このような東京五輪の暗黒面が新聞で報じられることはない。なぜなら、新聞もオリンピックのスポンサーなのだから。
世界中がオリンピックが巻き起こす札束の嵐に巻き込まれている。しかし、忘れてはいけない。そのカネはすべて我々の税金なのだ。一年延期で胸をなでおろしている場合ではない。延期の場合、中止よりもさらに巨額の公費が投入されるのだ。
第一章 平和とは縁遠いオリンピックの歴史
・ローマ帝国が滅ぼした古代オリンピック/・十九世紀の古代ギリシャ・ブーム/・最初から政治や経済と無縁ではいられなかった/・戦争の前には無力だった歴史/・自ら政治的に動くIOC
第二章 IOCを巡る不透明なカネの流れ
・IOCがスイスに本部を置く理由/・FIFAの汚職事件/・オリンピック招致を巡る疑惑の歴史/・IOC委員たちの報酬/・山ほどある関連NPO/・関連会社も存在/・IOCの錬金術──OBS/・長野オリンピックの内部資料/・なぜか二つあるOBS/・ピーター・ユベロスが変えた世界/・竹田前JOC会長が辞任後もトップを続けた子会社/・「五輪貴族」の優雅な暮らし
第三章 高騰する放送権料のからくり
・二十年で三・四倍になった収入/・たった百万ドルだった放送権料/・「ロサンゼルス方式」の成功/・「オリンピックのマネタイズ」/・競り合う米ABCとNBC/・コードネーム「サンセット」/・人気競技がなぜおかしな時間帯に放送されるのか/・マラソン・競歩が札幌へ変更された本当の理由/・新型コロナウイルス問題が明らかにしたこと
第四章 立候補する都市がなくなる日
・都市は巨額の財政負担を嫌い始めた/・経済発展神話/・「モントリオールの悲劇」/・「オリンピックの呪い」/・共産党すら反対できないIOCの権威/・唯一反対したのは山本太郎議員
第五章 「TOP」という名のスポンサー
・貴族の嗜みだったアマチュアリズム/・TOPの登場/・バッハ会長を喜ばせたトヨタとの契約/・パナソニックは「白物家電」もカテゴライズ/・電動自転車をパナに押さえられたブリヂストン/・不評が相次いだボランティア登録システム/・衝撃を与えたマクドナルドの撤退/・ユベロスへのオマージュ/・招致段階で競技施設費ゼロのからくり
第六章 二〇二〇年東京オリンピックの真実
・レガシーにならない新国立競技場/・設計に盛り込まれていなかった聖火台/・なぜ競技場の規模が「八万人」になったのか/・八万人規模なら日本青年館まで建設敷地になる/・根拠となったあいまいな決議/・頓挫したはずの神宮外苑再開発/・「密約」はあったのか
・「使い捨て」が前提だった新国立競技場/・神宮外苑再開発の起爆剤/・森元首相「どうぞ、進めてください」/・オリンピックが隠れ蓑に/・萩生田文科相の関与/・オリンピックで得をした関係者/・霞ヶ丘アパートの取り壊し/・「人間として扱ってくれなかった」/・二度目の「五輪ファースト」/・黒塗り地図の答え/・『GAIEN PROJECT「21世紀の杜」企画提案書』
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