デビュー以来、大学生や贋者の海賊が、成り行きで探偵役を務める、というミステリ小説を書いてきました。
小説の舞台は日本だったり外国だったり、現代だったり過去だったりと、色々ですが、一度もちゃんとした探偵が出てこないことが、我ながら不思議でした。
書いた本人が不思議がるのも変ですが、子供の頃から名探偵が好きで、昔は海外ミステリを手にしたとき、登場人物一覧の中に探偵の名前があるか否かで、読む読まないを決めていました。
そういう人間が、まがりなりにもミステリ作家になったのに、どうして作中に探偵が登場しないのかと、たぶん誰も気にしないでしょうが、本人だけは気になっていました。
いや、理由はもう分かっています。私がこれまでに考えたプロットやストーリーには、探偵が必要なかったからです。登場人物の誰かが探偵役になれば済んでしまう話だったからです。
いくら好きだからといって、必要のない人物を出演させることはできません。
そこで今回は、「まず探偵ありき」で話を考えました。
なるほど、こうすれば探偵が出せるじゃないか、と目から鱗がぼろぼろ落ちる気分です。
ただし出てくるのは、格好いい名探偵ではありません。そもそも実績がないのです。だからこういうタイトルになりました。
「別冊文藝春秋 電子版3号」より連載開始
プレゼント
-
『ナースの卯月に視えるもの2』秋谷りんこ・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/06~2024/11/13 賞品 『ナースの卯月に視えるもの2』秋谷りんこ・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。