荻原浩『海の見える理髪店』
B はじめは暗いが、ラストで自分なりの道を歩んでいくところが素敵。
I 美しい描写。短編で、読む人がどこかに共感できる。
N 美しさばかりでなく、悲しみや陰影が鏤められている。
O 表紙が手に取りやすい。あまり厚くない。それぞれの家族の中にそれぞれ異なる悩みがあり、どこかに少し共感できる。家族との関りが薄くなる中で今のわれわれが読むのによい。
P 表題作が一番印象に残った。ラストでアッと思って、最初から読み直そうと思った。「空は今日もスカイ」などのように、後味の悪いものをあえて入れているところがよい。
D おもしろい。うまい。ただ感動を強要されるようにも感じられた。これに感動しないのは人間じゃないような。
Q 自分で家族を持った時に読んだら、「いい話」が「深い話」になるのかもしれない。
原田マハ『暗幕のゲルニカ』
F 美術作品をどう捉えるかについて教えられた。戦争の惨状についても。ピカソがくずなのが人間らしい。(笑)
R メッセージ性が強い。表紙は怖い。9.11など現代に通じる。憲法の問題にも。現代と同時並行する描き方もよい。
O 絵画もピカソのこともよく知らず、表紙を見ても何だこりゃ、と思ったが、読んでいくうちにこれがただの落書きじゃなくて、というのがわかるようになった。自分でも調べ、ピカソをもっと知りたいと思った。二つの時代に分けていたのが最後に一つになる。次のページを早く読みたい。
N 大戦前夜のパリと9.11がすっと合わさる。歴史は繰り返すという教訓を伝える。現代への警鐘。
S 小説のメッセージ性は直接書かれているものでなく、読む中で見出していくもの。この作品は直接的過ぎないか。
D そもそもメッセージ性のある方が上なのか。それでは啓蒙の道具ではないか。
M 途中までは史実なのに、最後にテロリストが出てくる急展開が些か鼻白む。
P 場面転換の頻度が高いよね。
F 場面展開が早いと感じるのは、もっと先を読みたいという意識の現れ。拉致のシーンは、ゲルニカがそれほど偉大な作品だということを言うためだろう。
須賀しのぶ『また、桜の国で』
S 伏線の組み込みがうまい、描写もすばらしい。登場人物も一人ひとり生き生きしている。
Q アイデンティティについて深く考えさせられる。日本人とは言い切れない人が日本人であろうとする痛々しさ、美しさ。その葛藤がリアル。また、新しい視点で描いている。敵なのか味方なのかわからず、日本をバイアスをかけずに見られる。戦争全体を俯瞰的に見られる。こういう機会がなければ読まなかった。他の高校生もこの本と出会ってほしい。
I 冒頭にあった地図の中を作品とともに歩けた。
N すでに歴史として知っている戦争で、主人公が絶望的な状況の中で生きようとする姿に、それは無理だとわかっていても、感情移入できる。
H 読んでいるうちに戦争がだめだということが分かる。多くの人に読んでもらいたい。
C 戦争だけでなく、友情やアイデンティティの問題を扱っている。物語の中に一番入り込めた作品。自分が体験しているような感じで読めた。
D 主人公たちは被害者であるばかりでなく、加害者にもなりうる。ポーランド人の身の処し方、相手を殺すことに違和感を感じなくなる過程に驚く。
B 視点がポーランド側からしかないが、戦争はだめだというメッセージを前面に押し出すことなく伝えてくれる。読みづらいが読んでよかったと思える。
L 言葉が刺さる。戦争の悲惨さが痛いくらいに刺さる。今まで自分が戦争を知らずに平和に暮らしてきたことが申し訳ないと感じさせられた。ワルシャワの戦争前後の描写の対照が素晴らしい。
M アイデンティティはありふれたテーマだが、視点が新鮮。史実とそうでない部分のバランスがよい。
J 過剰にポーランドに肩入れしている。が、ポーランドという視点から描くことで第二次大戦が新たに。愛国心が取りざたされる昨今だからこそ。
K それぞれの登場人物に複雑な背景がありながら、読む妨げにならない。暗いはずだが、それを前面に出していない。絶望的な状況の中で、前向きに生きる人。
E 史実よりも、友情の物語として。根本には、人間がみな分かり合えるという希望がある。
R 『暗幕のゲルニカ』と同じく戦争が主題だが、こちらは読みながらショパンの「革命のエチュード」が頭の中に鳴り響く。
G メッセージ性が強すぎ、受け入れられない人もいる。ポーランド側が正義か。正義なんてあるのか。戦争は「正しい」者同士のぶつかり合い。
P 正義同士のぶつかり合いだからこそ、どこから見るかが重要。史実として結果はわかっていたとしても、教科書で知っている歴史とは違って捉えられる。不謹慎かもしれないが、その意味で興味深い。
T 差別や戦争がとっつきにくいが、最後まで読むと印象が変わる。