24歳のときに『屋上のウインドノーツ』でデビューして以来、青春や音楽、スポーツにお仕事と幅広いジャンルの作品を生み出してきた額賀澪さん。デビュー10周年の節目に選んだテーマが「天才」です。史上最年少でプロ入りした中学生棋士、タピオカミルクティーの味もマカロンの味も知らない、かつての「氷上の妖精」、気がつかぬままに抜群の歌声を持ち、オーディションを駆け上がる天才中学生……。

　5つの天才とその姿をそばで“観測”していた者たちを描いた連作短編集に、書店員さんからの熱い感想がたくさん届きました。（第2回／全4回予定）

SuperKaBoS鯖江店 峯森和代さん
その才能に誰も気づかなければ、天才と呼ばれることもない。
活躍をすごいと認められ、賞賛され、人々に消費される天才たち。華々しい活躍をしたとしても熱狂は一瞬のもの。新たな天才が現れたら、以前の天才に興味を失う。
才能と努力と運。どれが欠けていても一番高い場所には行けない。誰もが認める天才がいる一方で、そのすごさをほんの一握りの人間だけが知っている天才もいる。
「がんばっているあなたを見ている人が必ずいるよ」と、教えてくれる1冊だと思った。

BOOKSえみたす富士吉原店　望月美保子さん
ファインダー越しに見える漲る闘志も揺るがない炎も真実を写し出す彼の才能なのか……心の内まで透かして見えてしまうほどの力、それは彼が真っ直ぐな心の持ち主だろうからか。
精一杯咲いた花が誰かの目にとまり、一花咲かせた記憶が自分にも残っていれば思い出は色褪せない、それがこれからの糧になるんだと元気づけられると思う。

書房すみよし武蔵中原　有坂務さん
才能を前にしたとき、人はどんな感情を抱くのか。嫉妬、畏怖、羨望、あるいは無関心……。そんな温度差に触れるたび、心にざらつきが残ることもある。けれどこの物語の「観測者」たちは、才能を信じ、その花がひらく瞬間を支え、導き、心からのエールを送りつづける。その姿が心地よく、読後にやさしい余韻と希望を残してくれた。

未来屋書店入間店　佐々木知香子さん
天才たちの光を見つけた時の胸の震えを『天才望遠鏡』が思い出させてくれる。
天才と周りの人達が近ければ近いほどフラットでいる関係に心が和みました。
誰にでも輝ける場所があること、努力してもいいんだと背中を押された気がします。
成し遂げたい思いは、なによりも強い。
とても良いお話でした。大好きです！

文真堂書店ビバモール本庄店　新井さゆりさん
「夢って、なんだったっけ？」
そんな大人にこそ読んでほしい！
天才の物語に見えて、実は読者自身の物語でもある。バラバラなはずの登場人物たちの歩みが、最後には自分の忘れていた夢と静かに重なり、心に沁みていく。
夢を追う痛みも、孤独も、歓びも──すべてを丸ごと抱きしめて包み込んでくれるような、そんな包容力に救われました。
追いかけていた夢に、物語を通してふと触れた。そんな一冊です。

くまざわ書店西新井店　塩里依子さん
天才という言葉に込められた期待、嫉妬、羨望。
それぞれの分野で輝き続けるために、彼らがどれだけの努力や犠牲を払い、戦ってきたのか。その胸の奥にどんな思いを秘めているのか。その一端を垣間見ることができた。
スポーツや芸術を見る目が変わる物語。

くまざわ書店調布店　山下真央さん
昔より出来なくなったからと言って
才能が無くなるわけでは無い、と私は思う。
たとえ才能を活かしきれなくなったとしてもそれが無かったことにはならないし、
また違う才能が見つかるかもしれない、そう思いたいからだ。
そんな私の印象に残った話は「妖精の引き際」です。レイナは才能のあったフィギュアスケートをやめる決意をした。律はレイナを見て、フィギュアスケートの才能がないことを幼いときに自覚した。どちらが幸、不幸だとは思えない。レイナはこれから新たな才能を、律は違う道で才能を見つけるかもしれない。
私は書道が好きだった。けれど私より遥か上にいる友人がいて、私も律と同じように諦めてしまった。それは残念なことではあるけれど、不幸ではない。今才能があるというものは見つけていないけれど、まだまだこれから見つかるかもしれない。誰だって、何歳になったって夢を探していいんだ。そう思わせてくれる作品でした。