過去の自分から受け取った手紙――。「八咫烏シリーズ」執筆の原点

作家の書き出し

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過去の自分から受け取った手紙――。「八咫烏シリーズ」執筆の原点

インタビュー・構成: 瀧井 朝世

阿部智里インタビュー(後編)

――さきほどノートに第2部を書く時の注意事項を書いていた話がありましたが、他にも未来の自分への注意事項を書いたりするんですか。

阿部 たまにあります。未来の自分はたぶん忘れているだろうから、気づいたことをメッセージに残しておくんです。今回、なかなか書けなくてスランプかなとちょっと思い悩んだんですけれど、その時には10年ほど前の高校時代に「スランプになった時に読みなさい」という手紙を残していたことを思い出して。それで開けたら、めちゃくちゃ過去の自分に怒られまして。

――どんな内容だったんですか。

阿部 「あんた今、書きたくないと思っているかもしれないけれど、今の私は書きたくて書きたくてしょうがなくて、プロになれたら本当に幸せだと思っているんだから、今の幸せをちゃんと自覚しなさい」と書いてありました。

――いい話……。そこから『楽園の烏』を完成させたわけですが、次が読めるのはいつになる予定でしょうか。

阿部 八咫烏シリーズに関しては、できれば1年後くらいに次を出したいなと思っています。第1部と同じようなペースでやっていきたいですね。ノンシリーズに関しても、その合間合間で出していきたいとは思っているんですが、どうなるか分からないところがあります。

――八咫烏シリーズの外伝の短篇も時折発表されていますよね。

阿部 スピンオフは本編に組み入れられないこぼれ話ですから、副次的にボロボロ出てくるんです。もうすでに5篇くらいたまっているので、またいずれ本にまとまるかなと思っています。


あべ・ちさと 1991年群馬県生まれ。早稲田大学文化構想学部在学中の2012年、『烏に単は似合わない』で史上最年少で松本清張賞を受賞。14年早稲田大学大学院文学研究科に進学、17年修士課程修了。デビュー作から続く壮大な異世界ファンタジー「八咫烏シリーズ」は第6巻『弥栄の烏』で第1部が完結。その後、外伝となる『烏百花 蛍の章』、シリーズ第2部の1巻となる『楽園の烏』を刊行。ほかの作品に『発現』。


AR「雪哉といっしょ」
 新刊発売を記念して、「八咫烏シリーズ」の人気キャラクター・雪哉と一緒に写真が撮れるという、楽しい試みも。スマートフォンにARアプリ「COCOAR2」をダウンロードし、『楽園の烏』の書影にかざすとキャラクターが出現します
詳細はこちらで https://books.bunshun.jp/articles/-/5731

別冊文藝春秋 電子版34号(2020年11月号)文藝春秋・編

発売日:2020年10月20日

楽園の烏阿部智里

定価:1,650円(税込)発売日:2020年09月03日