〈「女性問題だけはやめて」過呼吸かと思うほど心臓がバクバクに…サイバーエージェント藤田晋(52)を驚かせた“週刊文春からの1通の連絡”〉から続く
「とにかく女性問題だけはやめて。そんな祈るような気持ちで恐る恐るスマホを開くと、文春での連載のオファーだった」
今から数年前、週刊文春から連載のオファーをされたサイバーエージェントの藤田晋社長(52)。社長業が多忙にもかかわらず、この依頼を受け入れ、さらにライターも入れずに自ら筆を執ることを決めたワケとは? 新刊『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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週刊文春からの「連載オファー」を承諾したワケ
小学生の頃には将来の夢に「作家になりたい」と書いていたくらいだから書くことは好きで、創業した頃からこまめにホームページやブログ上に日記のようなものを書いていたし、日経や朝日新聞で連載をしていた頃もあった。近年はそういう真面目な連載にも飽きて、「近代麻雀」という漫画雑誌や、スポーツ新聞の競馬欄で連載したりもしていた。
コロナ中にはインスタグラムに「ワインインスタ」と称してその日飲んだワインボトルの写真を載せては、そこに全然関係ない日々の気づきやぼやきや愚痴などをつらつら書いていたら、意外と人気になって、人気になったことが理由で更新しづらくなってしまった。様々な影響を考えるとSNSで発言するというのは気を遣うものだ。でも日々頭の中で悶々と考えていることを吐き出す場所がなくなってしまった。
そんな時にこのオファーをもらったので、引き受けさせてもらうことにした。
私は2025年5月で52歳になった。
24歳でサイバーエージェントを起業して、もう27年間ずっと社長をやり続けている。上場したのもネットバブルの絶頂期だった2000年だったので、当時はどこに行っても断然の最年少。年齢を聞かれて答えると、「若いね~」と必ず言われるのが嫌だった。
連載タイトルの由来は「大好きなアレ」
それが今では、経営者の集まりに行っても自分が一番年上であることがざらである。上場当初は存亡の危機に陥ったこともあったけれど、お陰様で、AmebaブログやインターネットTV「ABEMA」を立ち上げたり、事業を拡大させていくことができた。
一方で、普段の私は「趣味が渋滞している」と公言しているほど趣味が多い。
小学生の時は将棋が好きで、地元福井の県大会で優勝したこともある。その後始めた麻雀では、2014年にプロも参加する麻雀最強戦で優勝した。麻雀の「Mリーグ」も作り、現在はチェアマンを務めている。あとJ1リーグのFC町田ゼルビアのオーナー兼社長で、競走馬約100頭を所有する馬主でもあり、毎週、週末になると手に汗を握り、心拍数を上げながらサッカーの試合と競馬のレースを交互に見守っている。
連載でのタイトルは「リーチ・ツモ・ドラ1」。運よくツモって裏ドラが乗れば満貫になるくらいの控えめな手で、いきなり役満や跳満を狙うわけではなく、仕事も趣味も謙虚に一歩ずつ、という思いを込めた。
社長を辞めて会長に退く
そして、私は2026年で社長を辞めて会長に退く。その経緯も本書には綴っているけれど、サイバーエージェントは若い社員を要職に起用し、成長の原動力としてきた会社だからだ。そんな会社のトップがずっと変わらなかったら説得力がない。
今回、書籍化にあたって、新たにつけたタイトルは『勝負眼』だ。確かに連載を執筆する中で自らの実体験を振り返ってみると、これまでありとあらゆる重大局面で勝負に挑んできた。チャンスと見て大胆に攻めるばかりではない。必死で守ることもあった。組織のリーダーとして、むしろ守る場面のほうが多いかもしれない。
麻雀では、細かなスキルや読みも大事だけど、結局は押すべき局面で押せるか、引くべき局面で引けるか、その「押し引き」が勝敗の9割を決めると言っても過言ではない。これは、ビジネスの世界にも通じるものがあると思う。
人生も会社も麻雀の配牌のように不平等だ。そんな中で、押すべきか、引くべきかをどう見極めるか。日々の出来事を等身大に書くつもりが、いつの間にか、社長を辞める私が、うちの社員やビジネスパーソンたちに伝えたいことを綴ることになった。
そんな本書が、読者の皆様の「勝負眼」を養う一助になれば幸いです。







