電子書籍

椎名林檎論

乱調の音楽

価格:※各書店サイトで確認してください
発売日2022年10月11日
ジャンルノンフィクション

唯一無二の表現者の真髄に迫る、革新的音楽論

「文學界」掲載時から大きな話題を呼んだ連載が書籍化!

デビューから約20年。
椎名林檎は、日本の音楽界にとって常に大きな存在であり続けている。
しかしながら、彼女に関する評論はあまりに乏しかった。

椎名林檎のファースト・アルバム『無罪モラトリアム』から
東京事変の最新アルバム『音楽』まで。
その規格外の才能を、歌詞・和音・構成・歌唱・意匠から統合的に論じる。

椎名林檎の音楽を「演奏」するように批評し、その音楽の本質に迫る。

目次

《目次》
序章   全てを読み込む音楽批評
第1章  現在進行形の衝動——『無罪モラトリアム』の衝撃(インパクト)
第2章  宙吊り(サスペンス)と緊張感(テンション) ——『勝訴ストリップ』と分裂
第3章  新宿系自作自演屋——平成の偶像(アイコン)と愛好家(ファン)
第4章  音楽を魅せる——椎名林檎の映像美学
第5章  ロックファンとの別離——擬古典派の『加爾基(カルキ) 精液(ザーメン) 栗ノ花(クリノハナ)』
第6章  豪雨の最中の旗揚げ——東京事変という『教育』機関
第7章 楽団(バンド)を再起動(リブート)する——『大人(アダルト)』の事変サウンド
第8章  座長など要らない——『娯楽(バラエテイ)』の規格外の音像
第9章  鎧を脱ぎ捨てること——未来志向の『三文ゴシップ』
第10章 フィジカルな限界の先——前衛的(アヴァンギャルド)でポップな実験作『スポーツ』
第11章 溶けあう才能——千秋楽の『大発見』
第12章 目抜き通りを歩く——逆襲(リベンジ)する『日出処』
第13章 本物(モノホン)と協働(コラボ)する——客演で連帯する『三毒史』
第14章 自由と食べること——『音楽』を再生(リプレイ)する東京事変
終章   全てを呑み込む椎名林檎

 

 

序章 全てを読み込む音楽批評

音楽を批評することはきわめて難しい。歌詞と音楽いずれかに偏った分析や、音楽を題材にした社会批評になるなど、「楽曲そのもの」を捉えそこなってしまうことも多い。
 

序章は、椎名林檎の音楽を論じるための方法論「実践的な演奏批評」について。類まれなる言語感覚に、作曲・編曲をこなし、唯一無二の歌声に演出センスまでを併せ持つアーティスト・椎名林檎を捉えるため、「楽曲そのもの」を批評するために必要なこととは。

 

 

第1章 現在進行形の衝動

椎名林檎の衝撃的なファースト・アルバム『無罪モラトリアム』から鳴り響いたのは、日本にそれまで全く存在しなかった音楽だった。
 

第1章では、『無罪モラトリアム』の楽曲を分析していく。『正しい街』の巧みな構成、その日本語の韻律や、歌詞が作り上げる世界などはどのように関係しているのか。あるいは、『歌舞伎町の女王』の「急降下/急上昇」についてなど。

 

 

第2章 宙吊りと緊張感

椎名林檎史上最大のセールスを誇った、セカンド・アルバム『勝訴ストリップ』は、〈分裂〉に満ちている。『罪と罰』のシングルジャケットにデザインされた、真っ二つに切断された車が象徴的に物語っているように――。
 

第2章では、『罪と罰』『本能』など『勝訴ストリップ』に収録されている楽曲を中心に分析する。歌詞やコード進行が複合的に作り出す〈分裂〉とその効果とは。また、椎名林檎を特徴づける「形式」へのこだわりや、彼女の「歌唱」についても論じる。

 

 

 


本の話ポッドキャスト【著者が語る】『椎名林檎論』その”規格外”の才能

「文學界」連載中から大きな話題を呼んでいた評論がついに書籍に!意外な連載のきっかけや、論考から泣く泣く外した楽曲など、執筆裏話を著者の北村匡平さんにお伺いします

担当編集者より

「文學界」でこの連載が始まったとき、思わずガッツポーズをしました。 連載が進むにつれて、ますます夢中になりました。初期の有名な楽曲の分析の面白さもさることながら、事変のあの曲が、『三毒史』が、こんな風に語られうるのかと——。
椎名林檎さんがデビュー以来ずっと音楽シーンの第一線を走り続けていることはもちろんですが、実は『幸福論』『丸の内サディスティック』『罪と罰』『本能』など、広く強く語り継がれているのはごく一部の楽曲のように思います。好きな楽曲が全く言及されない、とフラストレーションを抱え続けている方は少なくないはず。
『正しい街』から始まり、『モルヒネ』『すべりだい』や『葬列』『流行』、そして東京事変の名曲『OSCA』『修羅場 adult ver.』『能動的三分間』に『永遠の不在証明』などなど。椎名林檎さんや東京事変の他のメンバーのインタビューも丁寧に拾い上げながら論じる本書は、愛好家の皆様のお眼鏡にかなうものであると同時に、林檎さんを初めて知るような方にも、この20年来の日本の音楽シーンにご興味があるような方にも、お楽しみいただけるような評論かと存じます。ぜひ。

著者

北村 匡平

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