世界を揺るがせた「トランプ・ショック」。
その背景には、この40年間あまり続いてきた国際経済システムに対するアメリカの不満があった。
関税の大幅アップは単なる手段にすぎない。
アメリカの真の狙いを、近年の歴史や構造を踏まえて解き明かす。
本書を読むことで、世界経済についての解像度が上がる!
いま世界経済は大きな変化の構造変化の真っただ中にある。
第二次大戦後の、ドルを基軸通貨とする国際経済秩序が終焉を迎える可能性すらあるのだ。
「通貨」という視点から分析すると、そうした構造変化が見えてくる。
1980年代以降、「自由市場が最適な資源配分を実現する」という新自由主義イデオロギーを背景に、ヒト・モノ・カネが国境を超えて活発に移動する「グローバル経済」が台頭。
その結果、世界には2つのタイプの「レジーム」(経済体制)が出現した。
ひとつはアメリカなど、債務(借金)を増やして消費を拡大し、経済成長してきた「債務主導」レジーム。
グローバル経済のもと世界ではバブルが起きやすくなっており、バブルが続いている間であれば「債務主導」レジームも経済成長は可能だった。
もうひとつはドイツ、中国、そして日本など、「債務主導」レジームの国々へ輸出することで経済成長を追い求めた「輸出主導」レジーム。
そう、経済のグローバル化が生み出したのは、後者の貿易黒字を、前者の消費が吸収する「グローバル・インバランス(不均衡)」だったのだ。
しかし2008年のリーマン・ショックでバブルが崩壊。どちらのレジームも成長が困難となり、以来、世界経済は長らく停滞が続いている。
そして、経常赤字と
しかしアメリカは国際経済の秩序を支える立場から降りようとしている。
では、中国を中心とした自由貿易体制ができるのか? 伸張いちじるしい「グローバル・サウス」が主役になるのか?
著者の答えはいずれも「否」であり、国際経済は多極化していくと見る。
こうした変化を見すえて、従来の政策哲学を改め、日本が進むべき道
【はじめに】
トランプ・ショック/元外務審議官の見解/
今のアメリカは過去のアメリカではない/問題は関税ではなく、通貨である
【第一章 マールアラーゴ合意】
スティーブン・ミラン/トリフィンの世界/国際通貨システムの限界
関税と安全保障による脅し/ミラン論文の論理/ブレトン・ウッズ体制
ニクソン・ショックの再現?
【第二章 通貨とは何か】
二つの貨幣論/商品貨幣論/信用貨幣論/負債のピラミッド/信用創造
貨幣と国家/日本やアメリカの財政破綻はあり得ない/機能的財政
財政政策の違い/金融政策の違い/トラス・ショック
トラス・ショックの真因
【第三章 基軸通貨国の特権】
国際通貨体制/通貨の階層秩序/ドル本位制/「法外な特権」とは何か
経常収支赤字の持続可能性/「経常収支赤字ファイナンス」論の誤謬
バーナンキの誤解/トリフィンのディレンマは存在しない
ミラン論文の欠陥/中国による米国債の売り浴びせ?
【第四章 グローバル・インバランス】
新自由主義/新自由主義の起源/ニクソンの誤算/輸出主導の成長
金融化とグローバリゼーション/二つの「レジーム」
グローバル・インバランスがトランプ政権を生んだ/中国の台頭
中国の長期停滞/グローバル・インバランスの是正を目指すベッセント
経常収支黒字を減らす方法/ヨーロッパの大転換
共通通貨ユーロと新自由主義/積極財政に転換したEU
トランプ政権の新自由主義
【第五章 テクノ・リバタリアンと暗号通貨】
バイデンの警告/乗っ取られたアメリカ/テクノ・リバタリアニズム
バイデン政権の反・新自由主義/ベッセントのバイデン批判
新自由主義の逆説/暗号通貨とは何か/暗号通貨の欠陥
エルサルバドルの実験/暗号通貨バブル/国家の崩壊
【第六章 トランプ・ショック後の世界】
国際緊急経済権限法/「武器化された相互依存」/金融の核兵器
国際金融の地政学/「武器化された相互依存」の逆説/捕食的自由主義
中国株式会社/自由貿易の旗/覇権国家なき世界/第二次冷戦
日本の岐路/
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