書名(かな) | きじつくつうかどるのらくじつ とらんぷしょっくのほんしつをよみとく |
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ページ数 | 224ページ |
判型・造本・装丁 | 新書判 |
初版奥付日 | 2025年07月20日 |
ISBN | 978-4-16-661503-2 |
Cコード | 0295 |
世界を揺るがせた「トランプ・ショック」。
この唐突な関税措置に対して、多くの識者は、こう考えているだろう。
<自由貿易というリベラルな国際経済秩序は、アメリカを含む世界各国に利益をもたらしており、堅持すべきだ>
<トランプは「取引」によって、短期的な利益を上げることしか考えていない>
<リベラルな国際経済秩序に反するトランプ政権の行動は、ドルの急落を招く。経済指標が悪化すれば、アメリカは翻意するかもしれない>
本書で示されているのは、これらとはまったく違う認識である。
まず言えるのは、既存の国際経済システムには致命的な欠陥があるということだ。
1980年代以降、「自由市場が最適な資源配分を実現する」という新自由主義イデオロギーを背景に、ヒト・モノ・カネが国境を超えて活発に移動する「グローバル経済」が台頭。
その結果、世界には2つのタイプの「レジーム」(経済体制)が出現した。
ひとつはアメリカなど、債務(借金)を増やして消費を拡大し、経済成長してきた「債務主導」レジーム。
グローバル経済のもと世界ではバブルが起きやすくなっており、バブルが続いている間であれば「債務主導」レジームも経済成長は可能だった。
もうひとつはドイツ、中国、そして日本など、「債務主導」レジームの国々へ輸出することで経済成長を追い求めた「輸出主導」レジーム。
経済のグローバル化が生み出したのは、後者の貿易黒字を、前者の消費が吸収する「グローバル・インバランス(不均衡)」だったのだ。しかし2008年のリーマン・ショックでバブルが崩壊。どちらのレジームも成長が困難となり、以来、世界経済は長らく停滞が続いている。
こうした経済体制へのアメリカの不満こそが、トランプ・ショックの原因なのである。
多くは関税措置に目を奪われているが、トランプ・ショックの本質は通貨にある。
関税と、これまでアメリカが提供してきた安全保障を武器に、基軸通貨としての地位を維持しつつもドル安を誘導し、アメリカの製造業の競争力を強化する。つまり、ニクソン・ショックと同じく、既存の国際通貨体制を破壊し、自分たち有利なものへと作り変える――これがアメリカの真の狙いなのだ。
ただし、第二次トランプ政権の企ては必ず失敗する。
それはなぜか?
そして、その失敗はリベラルな国際経システムの崩壊を決定づける。
では、世界経済はどうなってしまうのか?
「通貨」という視点から、世界経済の歴史的な構造変化を徹底分析。
本書を読むことで、世界経済についての解像度が上がる!
【はじめに】
トランプ・ショック/元外務審議官の見解/
今のアメリカは過去のアメリカではない/問題は関税ではなく、通貨である
【第一章 マールアラーゴ合意】
スティーブン・ミラン/トリフィンの世界/国際通貨システムの限界
関税と安全保障による脅し/ミラン論文の論理/ブレトン・ウッズ体制
ニクソン・ショックの再現?
【第二章 通貨とは何か】
二つの貨幣論/商品貨幣論/信用貨幣論/負債のピラミッド/信用創造
貨幣と国家/日本やアメリカの財政破綻はあり得ない/機能的財政
財政政策の違い/金融政策の違い/トラス・ショック
トラス・ショックの真因
【第三章 基軸通貨国の特権】
国際通貨体制/通貨の階層秩序/ドル本位制/「法外な特権」とは何か
経常収支赤字の持続可能性/「経常収支赤字ファイナンス」論の誤謬
バーナンキの誤解/トリフィンのディレンマは存在しない
ミラン論文の欠陥/中国による米国債の売り浴びせ?
【第四章 グローバル・インバランス】
新自由主義/新自由主義の起源/ニクソンの誤算/輸出主導の成長
金融化とグローバリゼーション/二つの「レジーム」
グローバル・インバランスがトランプ政権を生んだ/中国の台頭
中国の長期停滞/グローバル・インバランスの是正を目指すベッセント
経常収支黒字を減らす方法/ヨーロッパの大転換
共通通貨ユーロと新自由主義/積極財政に転換したEU
トランプ政権の新自由主義
【第五章 テクノ・リバタリアンと暗号通貨】
バイデンの警告/乗っ取られたアメリカ/テクノ・リバタリアニズム
バイデン政権の反・新自由主義/ベッセントのバイデン批判
新自由主義の逆説/暗号通貨とは何か/暗号通貨の欠陥
エルサルバドルの実験/暗号通貨バブル/国家の崩壊
【第六章 トランプ・ショック後の世界】
国際緊急経済権限法/「武器化された相互依存」/金融の核兵器
国際金融の地政学/「武器化された相互依存」の逆説/捕食的自由主義
中国株式会社/自由貿易の旗/覇権国家なき世界/第二次冷戦
日本の岐路/
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