「池波本」の決定版登場!!
江戸文化の残る東京に生まれ、株屋や役所などで働きながら映画と芝居に熱中した池波正太郎。戦後は長谷川伸に師事し、三十を過ぎて小説執筆を始める。みずからを職人と見立てることで、『鬼平犯科帳』を始めとする多くの優れた小説、エッセイを遺した。気鋭の批評家が軽快な語り口で池波ワールドの魅力に迫る。
解説・今村翔吾
第一話:遠い日の幻影
数々のエッセイをもとに、池波正太郎の誕生と幼年~少年時代を語る。
第二話:江戸の風韻
池波少年を育んだ「江戸」がのこっていた時代の「東京」について。
第三話:師弟の様子
池波正太郎の小説の師にして、新鷹会の主宰者・長谷川伸のこと。
第四話:歴史を見つめる眼
真田太平記や数々の忍者ものを書いた池波には、歴史の裏側で活躍する者、敗者として「正史」に刻印された人間たちへの深いまなざしがあった。
第五話:善人でもなく悪人でもなく
鬼平こと長谷川平蔵の有名な台詞「人間というやつ、遊びながらはたらく生きものさ。善事を
おこないつつ、知らぬうちに悪事をやってのける。悪事をはたらきつつ、知らず識らず善事をたのしむ。これが人間だわさ」。
この価値観は、「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の池波3大シリーズを貫く。
第六話:池波小説は美人に冷たい!?
多くの小説家から傾城の美女的な描写をされてきた秀吉の側室「淀殿」。ところが、
池波は彼女を、濃い化粧の「化け物」と書いてのけた。そして、池波小説で幸せになるのは、
十人並みの器量の働き者の女性。また、多くの老婆もいとしげに登場する。
池波の女性観にせまる。
第七話:「省略の余韻」と「簡潔の美」
池波の文章作法について。「説明」を排除した文章である。
第八話:江戸っ子ぶらない
著者・里中氏は地方出身者。そんな氏が眩しく見る「本物の江戸っ子」としての池波正太郎。
第九話:会話と人物造型
池波小説の醍醐味、「会話」文について。
第十話:不器用な名人
若き日、旋盤工として働いた池波正太郎。その時に体得した「仕事との向き合い方」「段取り」が小説家をつくった。
第十一話:「才能」と「意匠」
池波は判でおしたような単調な暮らしの中で、締め切りを厳守しながら、
数々の小説とエッセイを書いた。小説家と「才能」の関係を考察する。
第十二話:命名の達人
池波は、樋口一葉を愛読していた。実は「十三夜」の人物名が、池波作品に・・・。
第十三話:『鬼平犯科帳』の斬新
実在の人物が、日本一愛されるキャラクターになるまで。
第十四話:「歴史」と「小説」のせめぎ合い
司馬遼太郎、吉村昭、そして池波正太郎を比較する。
第十五話:反歴史主義
多感な青年期に戦争と敗戦を体験した池波正太郎。掌返しのジャーナリズムや歴史学者に対する深い懐疑を終生持ち続けた。
第十六話:等身大史眼
池波の歴史時代小説は、リアルな人間の小説だ。小説「色」で土方歳三を描き、なにかが変わった。
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