老いの入舞い

麹町常楽庵月並の記

1,650 (税込)
発売日2014年06月12日
ジャンル歴史・時代小説
商品情報
書名(カナ) オイノイリマイ オイノイリマイ コウジマチジョウラクアンツキナミノキ
ページ数 272ページ
判型・造本・装丁 四六判 軽装 並製カバー装
初版奥付日 2014年06月15日
ISBN 978-4-16-390076-6
Cコード 0093

新米同心&庵主の江戸事件簿

【直木賞作家・松井今朝子の新感覚捕物帳スタート!】
北町奉行所の定町廻り新人同心・間宮仁八郎が、上役から命じられたのは、麹町の平河天神社の近くにある「常楽庵」なる庵を月に一、二度立ち寄ること。詳しい理由は聞かされぬものの、庵主は元大奥の女中でかなりの要職に就き、一筋縄ではいかない人物らしい。おそるおそる地元の御用聞きの文六と常楽庵を訪れた仁八郎だったが、かつて大奥で「滝山様」と呼ばれ、現在は比丘尼姿となっている年齢不詳の庵主の志乃は、案外に仁八郎を気に入ってくれた。しかし、個性的な女中たちの鷹揚な態度や行儀見習いの若い町娘たちのかしましさに居心地悪く、仁八郎自身はなるべく関わりあいになるのはよそうと決めた矢先、常楽庵に出入りしていた祝言間近の娘・ちせが「巳待ち」の夜に行方不明に。事件解決のため奔走する仁八郎だが、庵主が何か事情を知る模様で――(『巳待ちの春』)!?
ひとつめの事件に辟易した仁八郎だが、麹町界隈の見回りを受け持ってから、何か事が起きるたびに常楽庵が関わってくる。不審火で父を亡くしたと訴える娘・りつは常楽庵に行儀見習いに通っており(『怪火の始末』)、ある死骸を発見したのは常楽庵の女中・ゆい(『母親気質』)。挙句、奉公先から戻らなかった娘の水死体と赤坂田町の相対死となった男女の事件の真相を探るべく常楽庵の関係者たちはとんでもない行動に出て……(『老いの入舞』)。
知恵も胆力も底知れぬ元大奥の隠居と、若気ばかりはやるひよっこ同心の丁々発止のやりとりも楽しい謎解きは、新しい江戸の名コンビの誕生を予感させます。「入り舞い」とは舞い手が退場する寸前にもう一度舞台の真ん中に引き返して華やかに舞って見せるもの。それゆえ年寄りが最後に花を咲かせる姿は「老いの入舞い」と呼ばれるが、志乃の活躍は、まだまだ続きそうです。

目次

巳待ちの春
弁財天を祈った翌日、祝言間近の娘が消えた。賊は三百両の身代金を要求し――。

怪火の始末
火事で不運に命を落とした嘉村屋惣兵衛。一人娘のりつは火付けが原因と訴える。

母親気質
茶屋の看板娘が殺された。仁八郎は下手人を大店の息子と睨んで調べを進めたが。

老いの入舞い
お堀に浮かんだ娘の死体と、赤坂田町の男女の相対死に隠された共通項が?

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担当編集者より

麹町といえば文春社員にとってはお馴染みの場所ですが、かつて江戸時代は付近に有力大名の屋敷や旗本屋敷が立ち並び、その御用を勤める有力な商家も多くあったとか。「武士も町人も同時に闊歩していたなんて面白い場所ですね」と、著者の松井今朝子さんは、この地を新しい捕物帳シリーズの舞台に定めました。主人公の北町奉行所定町廻りの同心・間宮仁八郎は、やる気はあるが経験不足の新米。そこで事件の謎を解くのは、なんと大奥出身の尼僧――脇を固める面々も個性的で、今後もさらに活躍が期待できそうです。(MK)

著者

松井 今朝子

1953年京都市生まれ。早稲田大学大学院文学研究科演劇学修士課程修了。松竹を経て故・武智鉄二氏に師事、歌舞伎の脚色・演出などを手がける。
97年『東洲しゃらくさし』で小説家デビュー。同年『仲蔵狂乱』で時代小説大賞、2007年『吉原手引草』で直木三十五賞、19年『芙蓉の干城(たて)』で渡辺淳一文学賞を受賞。
その他の著書に『円朝の女』『師父の遺言』『料理通異聞』『縁は異なもの 麴町常楽庵 月並の記』『江戸の夢びらき』『愚者の階梯』など多数。

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