単行本

満映とわたし

1,760 (税込)
発売日2015年08月05日
ジャンルノンフィクション
商品情報
書名(カナ) マンエイトワタシ
ページ数 312ページ
判型・造本・装丁 四六判 上製 上製カバー装
初版奥付日 2015年08月05日
ISBN 978-4-16-390314-9
Cコード 0095

甘粕さんは卑怯だった……旧満映最後の証言

今年95歳になる岸富美子。女性映画編集者の草分けであり、「満映」(満州映画協会)の最後の生きた証言者でもある。

15歳で第一映画社に編集助手として入社し溝口健二監督の名作「浪華悲歌」「祇園の姉妹」の製作に参加、その後、原節子主演の日独合作映画「新しき土」の編集助手も務める。映像カメラマンだった兄の渡満に従い、1939年、国策映画会社だった旧満州映画協会に編集者として入社。赴任当時の甘粕正彦理事長の姿を記憶にとどめている。

1945年8月敗戦直後に甘粕は自決する。指導者を失った満映社員とその家族たちはソ連侵攻にともない、朝鮮への疎開を図り奉天まで移動するが、脱出かなわず、再び新京の満映に戻る。国共内戦の勃発と共に、岸一家(夫も映像カメラマン)は日本人技術者として貴重な映画機材を守り、中国人技術者を教育するという決意のもとに中国共産党と共に松花江を渡り、鶴岡に赴く。ここで記録映画の製作などを始めるが、多くの日本人が人員整理の対象となって松花江近くの部落で過酷な重労働を強いられる。1949年、苦難を経て三年ぶりにかつての満映、東北電影製片廠に戻り、中国映画の編集をしながら、中国人スタッフに映画編集の技術を教える。1953年にやっと日本に帰国するが、レッドパージで日本の映画会社には就職できず、岸にはフリーランスで働く道しか残されていなかった。

その歴史に翻弄された苦難の生涯と国策映画会社「満映」の実態を、ノンフィクション作家・石井妙子の聞き書きと解説によって描きだす、戦後70年の貴重な証言本。

目次

序章 出会い
第一章 映画界に引き寄せられた兄たち
第二章 第一映画社--伊藤大輔と溝口健二
第三章『新しき土』と女性編集者アリスさん
第四章 満映入社、中国へ
第五章 甘粕理事長と満映の日々
第六章 玉砕直前の結婚式
第七章 甘粕自決、ソ連軍侵攻
第八章 国共内戦の最中、鶴崗へ
第九章「学習会」と「精簡」
第十章 映画人、炭鉱で働く
第十一章 北朝鮮からの誘い
第十二章 国民的映画『白毛女』
第十三章 日中の狭間で育てた弟子たち
第十四章 十四年ぶりの祖国
第十五章 日中満映社員たちの戦後

担当編集者より

岸富美子さんは大正9(1920)年生まれ。伝説の女優、原節子、李香蘭と同い年。15歳で映画編集者となり、当時はフィルムを舐めて乳剤を剝がし繫いでいたそうです。「活動屋」と呼ばれていたキネマの世界を彷彿させるエピソードに惹かれます。
圧巻は満洲にわたってからの波乱万丈の日々。社員の遅刻を許さなかった甘粕正彦理事長や男性の出入りが絶えなかった李香蘭など、当事者ならではの貴重な証言ばかり。95歳の著者が語る戦後史の秘話です。

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