単行本

魂を撮ろう

ユージン・スミスとアイリーンの水俣

2,090 (税込)
発売日2021年09月10日
ジャンルノンフィクション
商品情報
書名(カナ) タマシイヲトロウ ユージンスミストアイリーンノミナマタ
ページ数 360ページ
判型・造本・装丁 四六判 上製 上製カバー装
初版奥付日 2021年09月10日
ISBN 978-4-16-391419-0
Cコード 0095

日本で二度致命傷を負った報道写真家

伝説のフォトジャーナリスト最後の3年間。20歳の時、51歳のフォトジャーナリスト、ユージン・スミスと出会ったアイリーン・美緒子・スプレイグ。二人は、チッソの工場排水が引き起こす未曾有の公害に苦しむ水俣を目指した――。取材開始から十年。近代化の傷と、再生を勝ち取った魂の闘いに迫る大河ノンフィクション。

<目次>
序 章 小さな声に導かれて
第一章 アイリーンの生い立ち
第二章 写真家ユージン・スミス
第三章 ニューヨークでの出会い
第四章 不知火の海
第五章 水俣のユージンとアイリーン第六章 写真は小さな声である
第七章 撮る者と撮られる者
終 章 魂のゆくえ

<著者より>
水俣病が工場排水を原因とする公害であると国家に認定されたのは一九六八年、環境庁が公害対策を担うために発足したのは、一九七一年のことでした。
一九六四年には東京オリンピックが、一九七〇年には大阪万博が開催されましたが、都市部が華やかな国際イベントに沸く、その同じ時代に、水俣病、四日市ぜんそく、イタイイタイ病といった、公害に苦しむ人々の闘いがありました。
公害は高度経済成長のひずみである、と、よく言われます。ですが、「ひずみ」などではなく、高度経済成長の中に公害は内包されていた、公害を黙認することなくして高度経済成長は達成されなかった、そのように私は捉えました。
高度経済成長の日本を「奇跡の時代」として捉え、過去の栄光としてのみ記憶し、そこに日本社会の理想を求める限り、過ちはまた繰り返されるのではないか。私達が望む社会はどのようなものであるべきなのか。コロナ禍の中にオリンピック開催が強行された今こそ、見つめ直したい。
執筆中も現在も、「なぜ、今、水俣病なのか。過去の話ではないか」と問われることがあるのですが、これまでのような成長を頼りとする社会を是としていくのか、未来図を描くためにも、振り向くべき過去がある、そのような思いから本書を「今」、執筆しました。

<担当編集者より>
「女帝 小池百合子」で今年大宅賞受賞された石井さんの受賞後第一作。
深刻な内容ですが、高度経済成長の日本社会を体感しながらぐいぐいと物語に引き込まれていきます。
国も企業も、人命より利益優先。コロナ禍のいま、政府による無為無策のため、国民は国から棄てられようとしているという現実。人間の命の大切さを、心から祈るような気持ちでこのテーマに取り組んだ著者の熱い思いを感じてください。

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目次

序章 小さな声に導かれて(写真は小さな声にすぎない/「ヒロシマ、ナガサキ、ミナマタ)
第一章 アイリーンの生い立ち(曾祖父・岡崎久次郎/アメリカへ/富が人を不幸にする/魔性の祖母・桂子/徳富蘇峰と「光之村」/久次郎の死/父 ウォーレン・スプレイグ/アイリーンの誕生/「自分は邪魔、いなければいい」/スタンフォード大学へ
第二章 写真家ユージン・スミス(父の自殺/ニューヨークで母と闘う/妻カルメンとの出会い/戦場へ/サイパンで知った戦場の真実/レイテ島、そして硫黄島/沖縄で砲弾を浴びる/楽園への歩み/「ライフ」と母を失う/キャロルとの出会い/姿を消したキャロル)
第三章 ニューヨークでの出会い(灰色のロフト/運命の出会い/「君がいなくなったら死ぬ」/暗室の苦闘/元村和彦の来訪/親族の大歓待/石川武志との出会い)
第四章 不知火の海(塩田の広大な跡地/憧れになった「会社行き」/冷酷な新しい支配者/朝鮮半島への進出と敗戦/水俣病の「発見」/「針金で頭をえぐられる」/想像を絶する苦しみ/「工場排水が原因の可能性」熊本大学の発表/工場排水の停止を拒否/排水溝の移動で被害拡大/「猫四〇〇号」と御用学者たち/「産業が止まったら高度成長はない」/チッソの「隣人愛」で見舞金/産官学とメディアの結託/胎児性水俣病の「発見」/訴訟に踏み切った新潟水俣病の患者たち/十二年後、ようやく国が認める/本当の闘いが始まる/足元を見られた一任派/「チッソの社長と人間的な直後の対決をしたい」)
第五章 水俣のユージンとアイリーン(遺影の小さな女の子/自主交流派、川本輝夫の登場/「この世の常識にしたがって、まず話し合う」/スバルのサンバーで取材を始める/若返ったユージン/自主交渉派の闘い/智子と母を撮る/ユージン、五井工場で襲われる/証拠の映像があっても不起訴/「ジツコちゃんの苦悩が撮れない」/ユージン、「ライフ」に手紙を送る/「ジャーナリストは客観性に逃げるな」/柱が引き倒される日)
第六章 写真は小さな声である(すべては裁判で/法廷に響いた智子の声/補償をめぐる新たな闘い/チッソ社長嶋田の葛藤/写真展開催にこぎつける/ふたりの間に生まれた亀裂/金が水俣を変えた/大物プロデューサーの援助/新しい女性の影/写真集「MINAMATA」/ユージンのアリゾナ行きと智子の死/離婚、そしてユージンの死)
第七章 撮る者と撮られる者(上村夫妻の複雑な思い/「智子を休ませてほしい」/新しい混乱/映画化で新たな展開に)
終章  魂のゆくえ(チッソの社名変更と病名改正の要求/終わらない患者の分断/ユージンが見ていた未来)
あとがき

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担当編集者より

「女帝 小池百合子」で今年大宅賞受賞された石井さんの受賞後第一作。
深刻な内容ですが、高度経済成長の日本社会を体感しながらぐいぐいと物語に引き込まれていきます。
国も企業も、人命より利益優先。コロナ禍のいま、政府による無為無策のため、国民は国から棄てられようとしているという現実。人間の命の大切さを、心から祈るような気持ちでこのテーマに取り組んだ著者の熱い思いを感じてください。

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