書名(カナ) | アイノテンマツ コイトシトブンガクト |
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ページ数 | 256ページ |
判型・造本・装丁 | 文庫判 軽装 並製カバー装 |
初版奥付日 | 2018年11月10日 |
ISBN | 978-4-16-791181-2 |
Cコード | 0195 |
『狂うひと―「死の棘」の妻・島尾ミホ』著者が見た、激しすぎる作家たち。
恋の時間、結婚の時間、そして死までを深堀りし、作品に新たな光をあてる。(解説 永田和宏)
目次
1 小林多喜二――恋と闘争
一度も関係をもたぬまま、借金を抱えた酌婦から身請けし、「闇があるから光がある」と恋文を送るほど愛したタキ。だが彼女は、自分は多喜二にふさわしくないと求婚を拒み、表に出なかった。若くして非業の死を遂げた作家と「永遠の恋人」。
2 近松秋江――「情痴」の人
愛欲の愚かさを描き尽くし、「情痴作家」と呼ばれた最後の文士。「あたしなどは人間の屑だ」。現代ならストーカーと呼ばれかねない女性への恋着を描き、正宗白鳥とは私娼を奪いあう。晩年に失明した秋江の棺に入れられた女性の写真とは。
3 三浦綾子――「氷点」と夫婦のきずな
敗戦の価値観の転換で、虚無に捉えられた綾子。二人の男性と婚約破棄。結核、そして自死の企て――絶望の果てで見出した光は、幼馴染みのクリスチャンの男性だった。彼もまた結核に倒れるが、その不思議な縁で作家人生を支える夫と巡り合う。
4 中島敦――ぬくもりを求めて
「男一匹頭をさげてのお願ひでございます」。「山月記」の硬質な文体とはほど遠い必死さで、恋した女を譲ってくれと、その許婚に手紙を書いた。母の愛を知らずに育った男が求めたタカは、無償の愛を注いでくれる存在だった。三十三歳の死のその日まで。
5 原民喜――「死と愛と孤独」の自画像
終戦の前年に妻に先立たれ、広島で被爆。この世にひとり残されて、「夏の花」の作家の心は半ば死の側にあった。中央線で自死するまでの、荒涼とした晩年を癒したのは、無垢な少女との出会いだった。「キセキダ、キセキダネー。アノヒトニアッタノハ」。
6 鈴木しづ子――性と生のうたびと
「夏みかん酸つぱしいまさら純潔など」――美貌で知られ、性愛を大胆に歌い、「情痴俳人」と呼ばれて戦後を駆け抜けたしづ子。戦時下に待ち続けた恋人は帰らず、黒人兵の恋人もまた命を落とす。三三歳で消息を絶つまでの句に込めた真情。
7 梶井基次郎――夭折作家の恋
妻帯せず、恋人も持たず、女性との交情を小説に描くこともなく、「檸檬」など独特の作品世界を作り上げて早世した梶井は、宇野千代に烈しい情熱を抱き、当時の夫・尾崎士郎と〝決闘〟した。千代が二人の内実を永遠に明かさなかった理由は。
8 中城ふみ子――恋と死のうた
川端康成が序文を寄せ、中井英夫が編んだ歌集『乳房喪失』はセンセーションを巻き起こした。恋多き女として知られ、乳癌の死の床にあっても年下の男性を虜にしたふみ子。中井英夫との往復書簡には、短歌の美を追求する魂の共鳴があった。
9 寺田寅彦――三人の妻
ひとりで逝った最初の妻、夏子。十八と十四で結婚し、結核のため隔離されたまま娘を産んで亡くなった。四人の子をもうけた二人目の妻もまた急病で失う。寂しき人、寅彦は、毒舌でユニークな批評精神をもつ「悪妻」志んに見送られる。
10 八木重吉――素朴なこころ
詩人・八木重吉と、歌人・吉野秀雄、二人の夫に添い遂げた妻・登美子。切望されて十七歳で嫁いだ重吉は、無協会派のクリスチャンとしての信仰と生活のはざまで悩み、結核に倒れる。再婚した夫が詩人の遺稿を世に出す、数奇な運命。
11 宮柊二――戦場からの手紙
日中戦争で大陸に送られた一兵士の眼から、戦闘の最前線をつぶさに描き出した歌集『山西省』。戦地からおびただしい数の手紙と歌を書き送った女性は、わずか半年前に出会った英子だった。四年の間、一度も会えぬままに愛を育んでいく。
12 吉野せい――相克と和解
七六歳のデビュー作『洟をたらした神』で大宅賞受賞、「怖るべき老女」と激賞された。元文学少女の農婦は、詩と開墾にのみ情熱を傾けた夫との相克、愛児を死なせた苦しみの中で、自分は書かずにはいられない人間だと発見してゆく。
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