インタビューほか

鶴田真由×海堂尊
「ゲバラは旅で成長した」

「オール讀物」編集部

『ポーラスター ゲバラ覚醒』 (海堂尊 著)

いまなおカリスマ的人気を誇る革命戦士の青春旅行を描いた海堂さん。ドキュメンタリー番組で、キューバを訪れた鶴田さんと、ゲバラの魅力、旅の醍醐味について存分に語り合った。

宿命を背負った人ゲバラ

鶴田 この本を読み終えて、一番感じたのは、「ああ、ゲバラはやっぱり、生まれた時から宿命を背負っていた人なんだな」ということです。ゲバラの青春時代を俯瞰で読んだ時に、すべての点と点が線になって繋がっていくような。石の置き方というか、各地でのエピソードを、そうやって配置していらっしゃる。俯瞰した神の目線で書いていらっしゃるんだなと思いました。ゲバラと出会った人々との間に行き交う感情は、どういう目線で描いているのですか? 人物にシンクロするのか、俯瞰で駒を動かすように書かれているのか。

海堂 鶴田さんも文章を書かれるからでしょう、普通の人なら興味を持たないことを聞かれて驚きました。僕は作家というのは大概二重人格的な要素があるんだと思っているんです。だから答えはシンプルで、主人公ゲバラの視線と、それを上から俯瞰している神の視点と2つを持っています。楽しいのはゲバラ視点のとき。神様の視点で書くときは、本当につまらない(笑)。

鶴田 のめり込む体質でいらっしゃる? 海堂さんは恋愛体質ですか?

海堂 昔はそうでしたね(笑)。

鶴田 やっぱり! 恋愛体質の人は、ブレーキを持たずに、突っ込んでいくエネルギーを持っていて、巫女体質にもつながるものだと思うんですが。

海堂 女優さんでも、そういう方が多いんですか?

鶴田 役柄になり切って「このタイミングでこのセリフは気持ちが悪い」と敏感に感じ取る女優さんも多いと思います。私は、突っ込んでいく気質と、俯瞰で見るという、両方の要素を持っていて、もっといえば、俯瞰的に見てしまう要素が強すぎて、芝居が一向に上手くならないんです。

海堂 芝居がうまく思えないというのは、観客側からそう見えているのではなくて、鶴田さん自身が持っているベストイメージと離れているからだと思いますよ。

鶴田 ゲバラに影響を与えた人物として描かれているアルゼンチン大統領夫人のエビータも印象的でした。恋人でも婚約者でもなかったけど、何かお互いの人生に深い影響を与えあっていましたよね。

海堂 実は、2人が恋に落ちたどころか、出会ったことがあるという資料はないんです。ただ逆に、可能性としてゼロではないとは言えます。エビータの人生を詳しく調べると、売れない女優時代に地方巡業に行っていて、ゲバラがコルドバに暮らしていた時期と重なるんです。

鶴田 公的にはないけれども、もしかしたらあるかもしれない! マドンナが演じた映画『エビータ』では、ゲバラが案内役みたいな役で登場しました。アントニオ・バンデラスが演じるゲバラはもっとカッコいいはずなのに、と、私としてはとても不満だったんです(笑)。

海堂 小説の構想を考えているときには映画を見ていなくて、後から『エビータ』を見たときはショックでした。私のアイデアが……と(笑)。

鶴田 ゲバラの実家では、サロン的に周囲の大人が政治を語っていた、という部分も驚きました。

海堂 その部分は史実ですね。実際に父親がゲバラ少年を「反ペロン集会」に連れていったこともあるようです。ただ、日本語の資料には書いていなくて、外国語の文献でたまたま見つけたんですけど、そのときに、「ああ、スペイン語の資料が読みたい」と思いましたね。

鶴田 200冊も読まれて、まだ読みたいだなんて(笑)。

海堂 資料の読み込みは、無間地獄ですね(笑)。

【次ページ】人生を変える旅について

ポーラースター ゲバラ覚醒
海堂尊・著

定価:本体1,750円+税 発売日:2016年06月11日

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オール讀物 2016年7月号

定価:980円(税込) 発売日:2016年06月22日

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