昭和五十三年(一九七八年)、冒険家植村直己は犬橇(いぬぞり)で北極点を目指す旅にでかけた。
〈極点への道は、北のほうに吹き流れている雪紋が教えてくれる。一路北へ、橇は快調に走った。極点に立つ喜びも大きいかもしれないが、それより、目の前で犬たちが元気よく走ってくれるのが実にうれしい。きびしい旅で痩せてしまった犬たちが、懸命に橇を曳いてくれるのを見ていると、ありがたいという思いでいっぱいになる〉(写真集『植村直己記念館』文藝春秋編より)
この写真は途中同行した小社の安藤幹久カメラマンが撮影。四月二十九日に念願の北極点に到達した。
植村直己は昭和十六年(一九四一年)生まれ。日本人初のエベレスト登頂を含め、世界で初めて五大陸最高峰に登頂。昭和五十九年(一九八四年)二月、北米マッキンリーに単独登頂後、消息を絶った。