本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
女優として、エッセイストとして輝いた高峰秀子

女優として、エッセイストとして輝いた高峰秀子

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 高峰秀子は映画『衝動殺人 息子よ』(昭和五十四年=一九七九年)に八千草薫の代役として出演したのを最後に、「ほんとは結婚したらすぐやめたかった」女優業を廃業した。以来、夫君・松山善三との家庭生活を楽しんだが、その一方で名エッセイストとしても名を馳せた。この写真は、平成七年(一九九五年)十月号より「オール讀物」で二十年ぶりに雑誌連載「にんげん蚤の市」を開始するにあたり、東京・麻布の自宅にて撮影されたものである。

 大正十三年(一九二四年)、北海道函館市生まれ。昭和四年、映画『母』でデビューするや、天才子役と呼ばれ、戦前戦中戦後を通じ、木下恵介、成瀬巳喜男、豊田四郎、市川崑など、錚々たる監督による名画に数多く出演した。

 しかし、「にんげん蚤の市」第一回に稀代の大女優は記す。

〈私には映画界の友人がいない。もともと女優商売が苦手だった私は、撮影が終ると「お疲れさま」の挨拶もそこそこに一目散に家に帰ってしまう。これは私が非社交的なことと、みかけによらず人みしりをするためで、撮影所や仕事仲間がキライなわけではない。撮影終了後もスタッフたちが誘い合って一杯飲みにいったり、麻雀やお喋りを楽しんでいるのをみると、羨しく思わないではないけれど、私はただの一度もその仲間に入ったことがない。さぞ、つきあいの悪い奴と思われていたことだろう〉

 歯切れのよい筆致は、多くの読者を魅了した。平成二十二年(二〇一〇年)十二月二十八日、八十六歳で永眠。その死は、年が明けようとする大晦日まで公にされなかった。

プレゼント
  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/11/20~2024/11/28
    賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る