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ゆく年 来る年

ゆく年 来る年

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 「文藝春秋」創刊八十周年を記念して平成十四年(二〇〇二年)に刊行された『口語訳 古事記』(三浦佑之著)は、十二万部を超すベストセラーとなり、『古事記』ブームの火付け役となった。その後、「文藝春秋」では「古事記を旅する」と題し、日本各地の『古事記』ゆかりの地を訪ね、貴重な写真とともに三浦氏の紀行文を掲載した。

 写真はその取材で出雲の国・島根県の宍道湖を訪れた際に撮影された一枚。季節は秋。穏やかな湖面に映える夕陽の光の細い筋の中に、飛翔する一羽の鳥のシルエットが浮かぶ。

 〈宍道湖と中海(なかうみ)は、古代には入海(いりうみ)と呼ばれ、海の幸の宝庫だった。……古事記によれば、高天の原から降りて国譲りを迫ったタケミカヅチ(建御雷神)に敗れたオホクニヌシ(大国主神)は、「運び来る竹の竿(さお)もたわみ撓(しな)うほどの大きなスズキを、おいしいお召し上がり物として奉ります」と誓うのである〉(『古事記を旅する』三浦佑之著)

 古(いにしえ)の日本人も今と同じようにこのような景色を眺めていたのだろうか。年末年始、古人の営みに思いを馳せて『古事記』をひもといてみるのはいかがなものであろうか。

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