2012.06.27 インタビューほか

半世紀を過ごしたテレビの「本質」をつづる

「本の話」編集部

『テレビ屋独白』 (関口宏 著)

半世紀を過ごしたテレビの「本質」をつづる

――日本でテレビ放送が始まってから約60年。関口さんはそのうち50年もテレビに出続けている俳優であり、名キャスターです。今回が初の著作となるのは意外な気がしますが、執筆のきっかけは何だったのでしょう。

「それは、編集者が書かないかって言うから(笑)。いや最近、テレビが面白くない、同じようなことばかりやっているというご批判が私の耳にも相当入るんです。どうしてそうなっちゃうのか、私がテレビで仕事をしている中で感じるのはこういうことです、って書いてみようかと。自分のいる世界のことを感じたままに書いているから、特に苦労もなくできあがりました」

――題字をはじめ、本文中のイラストもご自身で描かれるなど、力の入った一冊になりましたね。

「いやいや、へたくそな絵で。絵は息子(俳優の関口知宏さん)のほうがずっと上手いですよ。へたな文章を、これで気を紛らわしてもらえればくらいのものです。まあでもたまたま、テレビの世界で生きてきて50年目の節目でこうして本を出すわけだから、記念になるようなものにしたいな、という気持ちもありましたね(笑)」

――50年も過ごしてきた世界への思いをつづっているのに、押しつけがましさを感じさせません。読んでいて自然と、あぁそうだ、テレビってこういうものだったと共感する。この距離感が関口さんならではと感じます。

「気がついたら50年という感じなんですよ。大学時代にこの仕事を始めて、アルバイト感覚が抜けないまま半世紀がたっちゃいました(笑)。いまだに自分のことはよくわからないんだけど、ただ、私は今でも視聴者の感覚でテレビを見ているんです。自分が出ながら、でも視聴者。その自分が面白がっていることが番組作りでも大事かなとは思うんですよね。私が面白がってないことを台本通りやっても、テレビって面白くならないような気がするんです。

 結局、小学生の頃に家にテレビが来たときのインパクト以来、私はテレビそのものが好きなんですよ。親父(俳優の佐野周二)が騒いでいて、なんだろうと思っていたらテレビが届いて、電気入れたら絵が映るわけです。『笛吹童子』か何かの映画をやっていて……えぇっ、家で映画が見られるの! って思ったのをはっきり覚えてます。私にとってはものすごい衝撃でした。それで今でもなにか、テレビにありがたみを感じているんです」

――しかし、黄金時代を経て、現在のテレビは様々な矛盾を抱えています。

「振り返ってみれば、テレビがどんどん変わっていく中で仕事をさせてもらってすごく面白かったんだけど、特にこの10年くらいかな、このままでいいのか、という疑問符も出てきたわけです。たとえば今のテレビは非常にきちっと作られている。マーケットリサーチをして、こうすると喜ばれます、って。でもテレビってきちんとやりすぎてると、息苦しいんです。だって見てる人は子どもか若者か老人かもわからないし、だいたいは周囲も雑音だらけの中で、まあボヤっと見てるわけですよ。だから、どこかに隙間みたいなものがあるほうが落ち着く。私は(司会を務める)『サンデーモーニング』でもいつも、隙間だったり、生ならではの感覚を大切にしていますね」

――本書でもテレビの本質とは「擬似」「生」「ハプニング」にある、という言葉が非常に印象的でした。

「そう、今の若いテレビ屋には、編集してスーパー入れて、何が起こるか全部説明するVTRを作るのがテレビの仕事だと思ってる人がたくさんいるんですよ。それはひとつの要素だけど、テレビの本質からは外れてるってことがわからないんです。なにげなく、人がやってることを見せて、そこで起こるハプニングが面白い、というのがテレビなのにね。テレビって何なんだろうと考える以前に仕事しちゃってる。

 かつての『あさま山荘事件』。あれ、状況が変化したのは最後にクレーン車で鉄球ぶつけたときだけで、それまでは何もなかったでしょ。立てこもってる男たちが時々顔出すくらいで。でも、みんなじーっと延々見ちゃったわけです。これがテレビの特徴。映画だったらかったるいけど、テレビだと見ちゃう。あれはひとつ、テレビとはなんぞや、ということを表現してたんじゃないかな」

――若い人にテレビの本質を伝えたいというお気持ちは、本書を通じて流れる大きなテーマのひとつですね。

「テレビ屋は一生懸命やってるんです。でも、とても苦しい状況の時代になった。その背景はこういうことです、とね。視聴者の皆さん、ご不満はおありでしょうが、テレビ屋を少し理解してやってくださいと。そしてテレビ屋も、テレビって何なのか、少し考えましょう、ということですね」

テレビ屋独白
関口 宏・著

定価:1050円(税込) 発売日:2012年06月28日

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