「若い子」を書こう、と思いました。
私は若い子が好きです。女子も好きだし男子も好きです。もちろん変な意味でではなく、小説の世界に生きるキャラクターとして描くのが好きなのです。それも結構変な意味では? と言われてしまえば、じゃあ、変な意味で若い子が好きです。それでいいです。
若い子という存在は、私の想像力をかきたててくれます。私は若い子の、未熟さゆえの暴走が見たい。未熟さゆえの爆発が見たい。彼らは可能性の塊です。自分自身の限界も知らず、抑制の方法も知らず、無力だけどそれゆえに無敵です。どこへでもいけるし、なににでもなれる。そんな網の目のように広がる無数の選択肢の中心で、呆然と立ち尽くす背中も見たい。私は若い子の、そういう姿が見たいのです。小説の世界でキャラクターという血肉を与えて、この世に現出させたいのです。
主人公は高校2年生の男子です。たくさんの他人と簡単に繋がれるようになったこの世の中で、一人、孤独をこじらせています。自分が伸ばした手の先には、誰もいないような気がしているのです。でも、「あしたはひとりにしてくれ」と言えるのは、今日を一人では生きていない者のはずです。未熟さゆえの寂しさの中で、彼が伸ばした手の先に誰を見つけられるのか。その手でなにを掴めるのか。どうか、確かめて頂けましたら幸いです。
「別冊文藝春秋 電子版2号」より連載開始
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『リーダーの言葉力』文藝春秋・編
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