前回に続いてお城を映しこんだ写真をもう一点お届けしたい。故郷鶴岡の鶴ヶ岡城址にたたずむのは藤沢周平。昭和五〇年(一九七五年)三月に撮影された。「暗殺の年輪」で直木賞を受賞して二年目の春だった。
月山と鳥海山に囲まれ、東を青龍寺川が流れる鶴岡市。藤沢周平の作品には、庄内地方の架空の藩、海坂藩が多く登場し、彼が愛したふるさとの風情を情緒豊かに伝えている。代表作の一つ、『蝉しぐれ』は江戸時代後期の海坂藩普請組の少年牧文四郎が、藩内の政争に巻き込まれた父を失いながら、たくましく成長する姿を描いた。
「藩として私がいつも考えて書いているのは、郷里の庄内藩なんです。典型的な二派相剋の歴史で、それが延々と続いていたんです」(「日本の美しい心」より)
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