掃き溜めのような場所に宿る哀愁、僕が求めているものはそういうもの――東山彰良(後篇)

作家の書き出し

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掃き溜めのような場所に宿る哀愁、僕が求めているものはそういうもの――東山彰良(後篇)

インタビュー・構成: 瀧井 朝世

東山彰良「作家の書き出し」

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僕が突然小説を書き始めた理由

――さて、東山さんは幅広いテイストの作品を書かれていますが、デビューは『逃亡作法 TURD ON THE RUN』で2002年の第1回『このミステリーがすごい!』大賞の銀賞/読者賞を受賞したからですよね。でも、ミステリー作家を目指していたわけではなかったんですね。

東山 博士論文を却下され続けてドツボ状態だった2000年に、突然小説を書きはじめたんです。それで、書いたものをどこかに応募したくて、最初はサントリーミステリー大賞に応募したら落ちたんですよ。それで違う小説を書いていたら、ちょうど宝島社が「このミス」を立ち上げたんです。締切が近かったので、「サンミス」に落ちたものを手直しして出しました。だから、「このミス」のカラーも知らなかった。

――そこからは、ジャンルやカテゴリーを意識せずに作品を発表していますね。

東山 すべては大衆文学、エンターテインメントだと思っています。僕にとって面白い小説以外は、物足りないエンターテインメントか鼻持ちならないエンターテインメントです。

――鼻持ちならないとは……(笑)。

東山 僕の感覚だと、ドストエフスキーでもジェイムズ・ジョイスでもみんなエンタメなんです。偉大な作家たちですが、すべての人が生きていくためにジョイスの作品を必要とするのかというと、そうじゃない。僕は何回も挑戦するけれど最終的には「分からんわ!」となる。そういうのは僕にとって鼻持ちならないエンターテインメント。自分が理解できないもの、ということです。ただ、ガルシア=マルケスだって、たとえば10年前、20年前は、僕にとって鼻持ちならないエンタメだったんです。「こんなの読めるか!」って思っていたけれど、40歳近くなって読んだら、衝撃を受けました。だから、自分の精神年齢とも関係あるし、僕が理解できないからといって、みんなが理解できないわけではないですよね。

――他の人の小説を読んでいて、「このテクニックすごいな」と思ったり、参考になったりすることはありますか。

東山 それはありますね。でも、真似してもしょうがないなと思うこともあります。小説家になる前に、スティーヴン・キングの『小説作法』を読んだんです。そこに、彼はできあがった初稿から2、3割削ると書いてあったんですよ。

――あんなにたくさん書いているのに、削っているとは……。

東山 実際にキングの本を読むと、「もっと削れ」と思うんですけれど(笑)。とにかく、それを読んだから、推敲って削るものだと思っていたんです。でも、僕は、初稿では書き足りてないことが多いんです。書いている時は見えていないところがあるので、書き終えたら1~2か月寝かせます。で、忘れた頃にもう1回読む。そうすると書き足りてないところや余分なところが分かるので、それを直していくと、僕の場合は小説が延びる傾向にありますね。

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小さな場所東山彰良

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