川越宗一・著『熱源』
- 2022.07.20
- <書評>「『熱源』は直木賞に相応しく文学界の大きな収穫である。」が公開されました
- 2022.07.06
- 2022年7月6日に文庫『熱源』が発売されます
- 2020.03.02
- 明治初期から太平洋戦争の終焉まで。壮大な物語を読み解く『熱源』ガイド【年表編】と【地図編】が公開されました
- 2020.02.21
- 「第162回直木賞受賞 川越宗一さん受賞のことば」が公開されました
- 2020.01.28
- <対談>大島真寿美×川越宗一「先輩作家が直伝! 直木賞受賞直後のリアル」が公開されました
- 2020.01.24
- <ニュース>『熱源』第162回直木賞受賞記念 川越宗一さんのサイン会が開催されます(京都/東京/北海道)
- 2020.01.21
- <ニュース>2020年本屋大賞にノミネートされました
- 2020.01.18
- 「“生きるって自己決定だと思う”アイヌの人々を描いた直木賞受賞作・『熱源』川越宗一さんインタビュー」が公開されました(文春オンライン)
- 2020.01.15
- <ニュース>第162回直木賞を受賞しました
- 2020.01.05
- <インタビューほか>「直木三十五賞 候補作家インタビュー(2)川越宗一 極寒の地を生き抜いた人々の信念」が公開されました
- 2019.12.26
- <特集>「目利き書店員が太鼓判! 令和の年末年始に読むべき時代小説」が公開されました
- 2019.12.16
- <書評>豊﨑由美「『胸がカッと熱くなる』文明という名の侵略に立ち向かった2人の男の物語」が公開されました
- 2019.12.13
- <ニュース>第2回ほんま大賞を受賞しました
- 2019.11.01
- <ニュース>第9回本屋が選ぶ時代小説大賞の受賞作が決定しました
- 2019.10.18
- <インタビュー>「山田風太郎賞候補作『熱源』作者の創造力に迫る!」が公開されました
- 2019.09.20
- <インタビュー>「読者の胸を熱くさせる『強烈な故郷への思い』」が公開されました
- 2019.09.25
- <特集>「文壇のレジェンドから川越宗一『熱源』に送られた熱い手紙」が公開されました
- 2019.09.18
- <特集>「川越宗一さん『熱源』に全国から熱い感動の声が続々!」が公開されました
直木賞の受賞が決まると、インタビューや取材をたくさん受ける。ぼくは会話こそ不得手であるが、チヤホヤされることは嫌いでもないので、うまくお答えできるように四苦八苦しながら何とかこなしている。
ただ、作品についていろいろと、あるいは同じことを何度も話しているうちに、みょうな気分になってくる。
受賞作を書いたのは、ぼくだ。ただし書いたのは書いた時のぼくで、今のぼくではない。自己同一性を失うほど疲れてはいないが、偽らざる実感でもある。同じ作品をもう一度替ける自信は全くない。
だからこれまでインタビューに答えていた、そして贈賞式で不慣れながら受賞者らしく振舞うであろう中年男性は、受賞作を書いた人間の代理人に過ぎない。ただし代理の仕事もそこそこに、受賞者を越えてやろうと野心を燃やす者である。
そんな代理人より受賞者本人の言葉を申し上げます。
このたびは拙著『熱源』に栄えある賞をいただき、ほんとうにありがとうございました。本作の材に取った時代を生きた全ての人々に感謝し、またぼくを支えてくれた皆様、刊行や流通に携わってくれたかたがたにも、この場を借りてお礼申し上げます。
そして代理人のぼくはこれから本人になりかわって、よりおもしろい作品を書けるよう、きっと精進してまいります。
近年まれにみる大きなスケールで小説世界を築き上げている。
――浅田次郎氏(直木賞選考委員)
民族に優劣などない。価値観は異なっても、互いに関わりあうことで、人の強さは生まれる。
――角田光代氏(直木賞選考委員)
重たい題材を、ときにユーモラスに、ときにスリリングに語って、読者を離さない。
時代の中で、私たちは多くを失い、変化させざるを得ないが、何かをとどまらせる意思を持つのも、人間だけなのだと小説は熱く訴えてくる。
――中島京子氏(「毎日新聞」2019年10月13日より)
日本とロシアという二つの帝国に翻弄され、同胞と引き裂かれた二人の男。遠く離れた地で生まれた彼らの人生が国境の島で交錯し、読み手の心に静かな熱を生む。
――梯久美子氏(「文藝春秋」2019年12月号より)
樺太アイヌの戦いと冒険を描く前代未聞の傑作巨篇!
樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。
金田一京助がその半生を『あいぬ物語』としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。
※青色の文字は実在の人物です。
- アレクサンドラ・クルニコワ
- ソヴィエト連邦軍の女性狙撃兵。階級は伍長。
- ヤヨマネクフ(山辺安之助)
- 樺太出身のアイヌ。幼少時に樺太から北海道・対雁(ついしかり)に移住した。
- シシラトカ(花守信吉)
- 同じく樺太出身のアイヌ。
- 千徳太郎治
- ヤヨマネクフ、シシラトカの幼なじみ。和人の父とアイヌの母を持つ。
- キサラスイ
- 対雁村でいちばんの美人と呼ばれる女性。五弦琴(トンコリ)の名手。
- チコビロー
- 対雁村に住むアイヌの頭領。
- バフンケ
- 樺太・アイ村の頭領。数か所の漁場を経営する実業家。
- イペカラ
- バフンケの養女。亡き母から譲られた五弦琴を弾くことを好む。
- チュフサンマ
- バフンケの姪。流行病で夫と子を失う。
- ブロニスワフ・ピウスツキ
- ポーランド人。ロシア皇帝暗殺を謀った罪でサハリン(樺太)に流刑となる。
- アレクサンドル・ウリヤノフ
- ブロニスワフの大学の先輩で、革命思想の持ち主。レーニンの実兄。
- レフ・シュテルンベルグ
- テロ組織「人民の意志」の残党で、サハリンに住む民族学者。
- ヴァツワフ・コヴァルスキ
- ロシア地理学協会の会員。アイヌの民族調査のため北海道を訪れる。
- ユゼフ・ピウスツキ
- ブロニスワフの弟で、兄に連座してシベリアに流刑。後のポーランド共和国初代元首。
- 金田一京助
- 東京帝大の学生(後に助教授)。アイヌ語の研究をしている。親友に石川啄木。
- 白瀬矗
- 陸軍中尉であり、探検家。世界初の南極点到達を目指す。
川越宗一(かわごえ・そういち)
1978年鹿児島県生まれ、大阪府出身。京都市在住。龍谷大学文学部史学科中退。2018年『天地に燦たり』で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。短篇「海神の子」(「オール讀物」12月号掲載)が日本文藝家協会の選ぶ『時代小説 ザ・ベスト2019』(集英社文庫)に収録。19年8月刊行の『熱源』で第10回山田風太郎賞候補、第9回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞、第162回直木賞受賞。