書名(カナ) | ドクドクセイブツノキミョウナシンカ |
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ページ数 | 352ページ |
判型・造本・装丁 | 文庫判 |
初版奥付日 | 2020年03月10日 |
ISBN | 978-4-16-791467-7 |
Cコード | 0198 |
地球上にはまだまだ、私たちの想像を絶する有毒生物たちがいる。本書は、そうした世にも奇妙な「毒々生物」の知られざる姿と、それを解き明かすべく(刺され、噛まれ、ときには自らその毒を摂取し)研究に挑む科学者たちを、ユーモラスな語り口で描く。
著者のクリスティ・ウィルコックスは、かつてはハワイ大学のポスドクとして有毒生物を研究しており、現在はサイエンス・ライターとしても活躍している。彼女が本書で紹介するのは……
カモノハシ:卵を生む唯一の哺乳類。その蹴爪には猛毒が潜んでおり、刺されると大量のモルヒネを投与しても全く効かないほどの激痛に襲われる。
ヤママユガの幼虫:毛のように見えるトゲの一本一本に毒がある。刺されると傷口や鼻・目の粘膜からの出血が止まらなくなる。
ヒョウモンダコ:刺されても痛みはほとんどない。だが、毒が回ると突然体が動かなくなり、やがて呼吸もできなくなる。
などなど。他にも「殺人ウニ」や、昆虫界最凶のアリなど、多種多様な有毒生物たちの生態が明かされる。
だが、本書で語られるのは、毒々生物の恐ろしさだけではない!
実はこれまで、生物が持つ毒は、その構造があまりにも複雑であるため、なぜそうした痛みや症状をもたらすのか、科学的にはわからない部分がとても多かった。しかし、近年ゲノム学が急激に発展してきたことで、その謎が徐々に明らかになってきている。
そうした知見をもとに、「生物の毒から薬をつくる」研究が進められている。実際、アメリカドクトカゲの毒から作られた「バイエッタ」は糖尿病の治療薬として広く使われている。また、トガリネズミやサソリの毒から作られた癌の治療薬はすでに臨床試験が進められており、最近ではミツバチの毒でHIVを殺せることもわかった。
そうした毒々生物の意外な科学的可能性にも触れられる、非常に魅力的な一冊。
第1章 猛毒生物の遺伝子に挑む
私はカモノハシに会うためオーストラリアを訪れた。可愛い彼らは、実は猛毒種である。その毒液からはクモやヘビ、トカゲなど、さまざまな生物から切り貼りされたような遺伝子が大量に見つかっている。それは何を意味するのか?
第2章 最凶の殺戮者は誰だ?
海でクラゲに刺され、猛烈な痛みのなか意識を失った女性。なんとか一命をとりとめた彼女はその後、毒クラゲの研究者になった。自分を襲った毒は何だったのか。そして彼女が見つけ出したのは、赤血球を破裂させる猛毒成分だった。
第3章 注射するのはヘビの毒
免疫を進化させ、毒ヘビを食べられるようになったマングース。では、同じ哺乳類である人間も毒への耐性を獲得できるのか。それを解明すべく、二六年間にわたりヘビの毒を自分の体に注射しつづける男。その体に起きた異変とは?
第4章 人生を変える「激痛」
昆虫学者のシュミットは「刺されると痛い昆虫」ランキングを作るため、アリやハチなど、七八種に自ら刺された。その一位はサシハリアリで、ふつうは刺されると数秒で卒倒するという。実物を見るため、私はアマゾンに向かった。
第5章 人食いトカゲの島へ上陸
インドネシアのリンチャ島に生息するコモドオオトカゲ。毒で獲物を出血死させる凶暴な彼らは、ときには人間さえも食べてしまうという。その小さな島に上陸した私がまず目にしたのは、彼らに食べられた動物たちの頭骨だった。
第6章 骨の髄まで食べつくす
あらゆる毒の中でも、私たちの体を壊死に至らしめる毒はもっとも残酷だといえる。ドクイトグモに咬まれると、私たちの皮膚は青、赤、紫、黒と変色して壊死する。その症状の「ロクソスセレス症」は、絶対にググってはいけない。
第7章 そのとき食物連鎖が逆転した
美しい貝殻の内に、人を殺せるほどの猛毒を隠しもつイモガイ類。彼らはかつて、海の中では魚類に食べられる弱い存在だった。だが、身を守るために手にした毒を進化させることで立場が逆転。魚類を食べる捕食者へと変身したのだ。
第8章 恐怖のマインド・コントロール
エメラルドゴキブリバチは、獲物の心を操り、ゾンビ化させる特殊な毒をもっている。毒を送り込まれたゴキブリは、幼虫の餌として進んで自らを差し出すのだ。一方、人間の心を操る毒も存在し、闇市場では高額で売買されている。
第9章 ミツバチの毒がHIVを殺す
生物がつくりだす毒はどれも、製薬学にとっては宝の山である。二〇〇〇年代以降、その毒から新たな薬が発見されているのだ。糖尿病からアルツハイマー、筋ジストロフィー、そして癌に至るまで、毒由来の特効薬が次々と現れている。
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