私たちは「毒」と聞くと、危険なもの、体に悪いもの、運が悪けりゃ死に至るものくらいにしか思っていないかもしれない。なぜ毒なのか、その仕組みは分からないけれど、ともかく危険で謎めいた物質くらいにしか思っていない。毒でまず思い浮かべるのはフグやキノコの毒くらいなもので、食べなければ毒には当たらないからあまり気にしていないのかもしれない。そのせいなのか日本では毒の研究は、最近まで極く一部でしか行われなかった。昭和の帝銀事件や平成のオウム真理教事件では猛毒の青酸カリやサリンが使われた。人工的な毒でも、生きものが産生したフグ毒やキノコ毒でも、人体に与える影響のメカニズムは同じである。青酸カリはシアン化アルカリ化合物で内臓や神経系に強烈な障害を起こし、サリンは有機リン化合物の神経ガスで、呼吸器系や皮膚から体内に入り込み死をもたらす。フグ毒はテトロドトキシンと呼ばれ海洋プランクトンが産生したものをフグが体内に蓄積したものとされ、神経系に異常が発生し呼吸が停止し、キノコ毒は多様だが食中毒のたぐいである。
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