選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子 河合香織

825 (税込)
発売日2021年04月06日
ジャンルノンフィクション
商品情報
書名(カナ) エラベナカッタイノチ シュッショウマエシンダンノゴシンデウマレタコ
ページ数 272ページ
判型・造本・装丁 文庫判
初版奥付日 2021年04月10日
ISBN 978-4-16-791683-1
Cコード 0195
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選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子 河合香織

825 (税込)
発売日2021年04月06日
ジャンルノンフィクション
商品情報
書名(カナ) エラベナカッタイノチ シュッショウマエシンダンノゴシンデウマレタコ
ページ数 272ページ
判型・造本・装丁 文庫判
初版奥付日 2021年04月10日
ISBN 978-4-16-791683-1
Cコード 0195

生まれたのはダウン症の子だった

【大宅壮一ノンフィクション賞&新潮ドキュメント賞 W受賞作品】

その女性は出生前診断で「異常なし」と報(しら)されて子供を産んだが、実は誤診でダウン症児だと告げられる。三カ月後、乳児は亡くなった。自己決定の機会を奪われた女性は医師を提訴するのだが――“命の選択”に直面した当事者たちの内面に肉薄する、大宅壮一ノンフィクション賞&新潮ドキュメント賞W受賞作。解説・梯 久美子



誰を生かし、
誰を生かすべきでないのか――

生殖医療の進歩によって社会が直面する命の選択の極限を描く、傑作ノンフィクション!


「この選択ができたのは、どうやっても助かる見込みがない命だったからです」(中略)

こうした、読んでいてどきりとさせられる率直かつ重たい言葉が、本書にはいくつも書き留められている。強制不妊手術の当事者や、ダウン症の女性からも著者は話を聞いている。彼女たちがここまで心をひらいて語ったことに驚かされるが、同時に納得もする。――梯 久美子氏(解説)

目次

プロローグ 誰を殺すべきか?
その女性は出生前診断を受けて、「異常なし」と医師から伝えられたが、生まれてきた子は ダウン症だったという。函館で医師を提訴した彼女に私は会わなければならない。

第一章望まれた子
「胎児の首の後ろにむくみがある」。ダウン症の疑いがあるということだ。四十一歳の光は悩 んだ末に羊水検査を受ける。結果は「異常なし」。望まれたその子を「天聖」と名づける。

第二章誤診発覚
「二十一トリソミー。いわゆるダウン症です」。小児科医の発した言葉に、光は衝撃をうける。 遠藤医師は、検査結果の二枚目を見落としていた。天聖は様々な合併症に苦しんでいた。

第三章 ママ、もうぼくがんばれないや
ついに力尽きた天聖を光はわが家に連れて帰る。「ここがお兄ちゃん、お姉ちゃんと一緒に 寝る寝室だよ」。絵本を読み聞かせ、子守唄を歌い、家族は最初で最後の一夜を過ごす。

第四章 障害者団体を敵に回す覚悟はあるのですか?
天聖が亡くなると遠藤医師はとたんに冷たくなったように夫妻は感じた。弁護士を探すが、 ことごとく断られる。医師から天聖への謝罪はなく、慰謝料の提示は二〇〇万円だった。

第五章 提訴
それは日本で初めての「ロングフルライフ訴訟」となった。両親の慰謝料だけでなく、誤診 によって望まぬ生を受け苦痛に苦しんだ天聖に対する損害賠償を求めるものだった。

第六章 母体保護法の壁
母体保護法ではそもそも障害を理由にした中絶を認めていない。したがって提訴は失当。被 告側の論理に光は、母体保護法が成立するまでの、障害者をめぐる苦闘の歴史を知る。

第七章 ずるさの意味
光の裁判を知って、「ずるい」と言った女性がいた。彼女は、羊水検査を受けられなかった のでダウン症の子を生んでしまった、と提訴したが、その子は今も生きている。

第八章 二十年後の家族
京都で二十年以上前にあったダウン症児の出産をめぐる裁判。「羊水検査でわかっていたら 中絶していた」と訴えた家族を訪ねた。その時の子どもは二十三歳になっているという。

第九章 証人尋問
裁判では、「中絶権」そのものが争われた。「中絶権」を侵害され、子どもは望まぬ生を生き たというが、そもそも「中絶する権利」などない。そう医師側は書面で主張した。

第十章 無脳症の男児を出産
苦しむだけの生であれば、生そのものが損害なのかを光の裁判は問いかけた。一方、この女 性は、子どもが無脳症であるとわかりながら、中絶をせずにあえて出産していた。

第十一章 医師と助産師の立場から
病院は赤ちゃんの生存の決定を家族に委ねるようになっている。障害をもって生まれた子は、 何もしなければ死ぬ子も多い。だが現場の助産師は、そうした中疲弊している。

第十二章 判決
判決は被告に一〇〇〇万円の支払いを命ずる原告側の勝訴。しかし、それは、「心の準備が できなかった」夫妻への慰謝料だった。光は「天聖に謝って欲しかった」と肩をふるわす。

第十三章 NIPTと強制不妊
優生保護法下で、強制的に不妊手術を受けた人たちが、国家賠償訴訟を始めて、全国的な広 がりとなった。私は最初に提訴した宮城県の原告の女性を訪ねる。

第十四章 私が殺される
「なぜダウン症がここまで標的になるのか」。NIPTによってスクリーニングされることに 「私が殺される」という思いで傷ついている人たちがいる。

第十五章 そしてダウン症の子は
ダウン症でありながらも日本で初めて大学を卒業した岩元綾は言った。「赤ちゃんがかわい そう。そして一番かわいそうなのは、赤ちゃんを亡くしたお母さんです」。

エピローグ 善悪の先にあるもの
「どうして私のことをかわいそうって言ったのでしょう……」。ダウン症当事者の岩元の言葉 を伝えると、光は涙をためながら言った。

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担当編集者より

本作は、2019年の大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をW受賞した話題作です。著者の河合香織さんはこの作品を書くのに、5年もの歳月をかけました。昨今、出生前診断技術の発達によって、私たちの社会が直面している「命の選択」の問題。この最も重いテーマにずっと向き合ってこられたのは、河合さんご自身が妊婦健診で胎児にダウン症の可能性を指摘され、赤ちゃんは先天性の病気はなかったものの、その後ご自身も敗血症で生死の境をさまよったことも大きいといいます。河合さんがどうしても書かなくてはならなかった作品、まさに「魂の一冊」として、ぜひ読んで頂きたいと思います。(担当KN)

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