「実は、舞台になることを前提に書いた小説だったので、やっと実現した!という思いです」
昨年11月に刊行、大きな反響を呼んでいる有川浩さんの『旅猫リポート』が、この4月、新宿・紀伊國屋サザンシアターで上演される。週刊文春連載直後から着手された原作者・有川浩さんみずからによる書き下ろし脚本。
「彼との出会いが作品の出発点となった」という、キャラメルボックスの看板俳優・阿部丈二さんとの演劇ユニット「スカイロケット」の記念すべき第一回公演である。
「自分の作品ですから、脚本も容赦なくカットしてしまうんです(笑)。役者さんに言われて復活した台詞が山ほどあります。目で読んで心地好いリズムと、口にして心地好いリズムは違うんですね。稽古では新しい発見がいっぱいありました」
これまでも、芝居制作の現場に幾度か携わってきた有川さん。あらためて、小説と舞台の違いを体感しているという。
「映画や舞台の現場で、私の作品の中のセリフがリズム感がいい、と俳優さんからお褒めいただいたことはあったのですが、『しかしながら息継ぎのポイントが難しい』と(笑)。小説を書くときは息継ぎは考えてなかったので……しぐさ、言葉、間合いを見ながら、役者さんの気持ちが切れないことに留意しています。登場人物の気持ち、性格の統一──これは小説にも共通します──、キャラクターを演じてくれる役者を尊重して稽古の現場にのぞんでいます」
秘密を抱いた主人公サトルと愛猫の旅が綴られた哀しくもあたたかい物語。となると、舞台上のナナはどうなるのだろう?
「猫耳はつけませんが(笑)、もちろんナナはいっぱい喋ります。読んでいただいたキャラクターが動き出しますから、ぜひ会いにきてほしいです。演劇は舞台上の役者と客席のお客様が同じ空間で感情を響かせて初めて成立する、一期一会のエンタテインメントです。その唯一無二のカタルシスを味わっていただけたらと思います」