インタビューほか

武士道女子高生の最後の夏

「本の話」編集部

『武士道エイティーン』 (誉田哲也 著)

『武士道エイティーン』 (誉田哲也 著)

誉田  早苗と香織の「十八歳」を考えたときに、彼女たちの関係や武道観というのは前二作ですでにできあがっているので、これはもうテーマにはできないと思いました。じゃあ、なんなら成立するのか。十八歳の部活というのは夏で引退になってしまうので、実際の剣道部員の方もそうでしょうし、物語上も、本当にがむしゃらに高三の夏までを駆け抜けるしかない。ならば、そのあと彼女たちはどうするのか。クライマックスを過ぎ、部活を引退したあとの彼女たちの選択。これにテーマをしぼってみようと思いつきました。そう考えると脇のキャラクターによるスピンオフ的な短編も、四人のうち三人が香織と早苗より先に「十八歳」を経験している人生の先輩の物語と捉(とら)えることができる。彼らが十八歳のときにどういう選択をしたのか、それを「十八歳」と「選択」繋がりで香織と早苗の物語に絡めていったらいい一冊になるのではないかと、短編を書きながら固めていったんです。──今回刊行される『武士道エイティーン』は前二作とは少しかわり、早苗と香織の高三のインターハイにむけての流れの中に、早苗の姉である西荻緑子(にしおぎみどりこ)、香織が唯一尊敬する師匠、桐谷玄明(きりやげんめい)、早苗の転校先の福岡南高の剣道部顧問、吉野正治(よしのまさはる)、そして香織に心酔する東松(とうしょう)学園の後輩、田原美緒(たはらみお)の四人の短編が入るというスタイルですね。

──ほかにも登場人物がいる中で、この四人を選んだ理由はなんだったのでしょうか。

誉田  まず最初に、ちょっと毛色の違う緑子が決まったんですが、今までずっと香織と早苗を交互にやってきたので、四人出すとしたら、今回も不公平にならないように二対二で分けたかった。緑子、玄明、吉野先生、ここまではすんなり決まって、でも最後の一人を決めるのに悩みました。吉野先生というのは武道的スタンスの人なのに、早苗側の登場人物なんです。ところが、もう一人を選ぶときにどうも早苗側になりがちで、なかなか香織側からは出てこない。武道具屋のたつじいも考えたんですが、玄明の幼なじみであるため玄明の話と内容が近くなってしまう。ある意味、香織が強烈な個性の持ち主なので、香織の周りから誰かを出してくるのが難しかったんです。でも、香織も早苗もいなくなった東松の剣道部をみることができる美緒なら面白いんじゃないかと。掲載の順番も最後ですが、決まったのも美緒が最後でした。

武士道エイティーン誉田哲也

定価:本体690円+税発売日:2012年02月10日