川口松太郎は明治三十二年(一八九九年)生まれ。小説家、劇作家。関東大震災後、大阪のプラトン社で川口は直木三十五の下で働いたが、二人ははじめことあるごとに衝突したという。しかし、〈直木は、次第に川口の目から鼻に抜ける利発さを好むようになったし、川口のほうも直木のさっぱりした破天荒な魅力に惹かれていった〉(『直木三十五伝』植村鞆音著)
その川口は、昭和十年(一九三五年)上半期、「鶴八鶴次郎」などで第一回直木賞を受賞する。ただし、当時の注目度は現在とは比較にならないほど、低かったようだ。「週刊文春」昭和四十年一月二十五日号の大宅壮一との対談によると、
〈大宅 あの時分、新聞に出たかな。受賞の記事が・・・・・・。
川口 出ない、出ない。文芸欄にだって、のりゃしない。
大宅 原稿料は? あがった?
川口 一銭も・・・・・・。注文もふえるわけじゃなしね。
大宅 いまは、一夜あければ・・・・・・。
川口 まるで、評価がちがうよ、世間の、ね〉
写真はこの対談時に撮影。受賞の翌年から連載が始まった「愛染かつら」は多くのファンを得た。
昭和六十年(一九八五年)没。
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