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放浪の画家、山下清は笑うことが下手だった

放浪の画家、山下清は笑うことが下手だった

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 放浪の画家、山下清は大正十一年(一九二二年)生まれ。知的障害児施設「八幡学園」でちぎり紙細工を覚え、その才能を精神病理学者の式場隆三郎に認められる。戦中から戦後にかけて戦後長らく放浪の旅に出たが、昭和三十一年(一九五六年)、大丸での「山下清展」を始め、全国で巡回展が開かれ、その名声が高まった。

 写真は、昭和三十四年に撮影された。彼の良き理解者であり、「先生」と慕った式場隆三郎博士(左)と踊る山下清。

〈ぼくが泣いたことがないというと、みんなが不思議がる。子どものときは泣いたかもわからないが、それからは泣かない。笑うことも下手なので、笑わない。このごろ笑うようになったというので写真をとられたが、やはり笑っていないのでもう一度わらってくれといわれて、あははといったらまた笑われた。

 ぼくは人にはよく笑われるが、ぼくは笑うことが下手です〉(「文藝春秋」昭和三十一年十一月号「『ハダカの王様』西へ行く」より)

 笑うこと泣くことを忘れた山下清の、笑顔を残す珍しい姿である。

 昭和四十六年没。

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