河井信太郎(かわいのぶたろう)は大正二年(一九一三年)生まれ。中央大学法学部夜間部に入学。高等文官試験合格後、海軍に応召。戦後創設された東京地検特捜部には、東京帝国大学法学部卒で経済検事出身の馬場義続らとともに、中央大学出身者が登用された。昭電疑獄でのちの特捜部の特色である帳簿捜査を確立したとされる。その後、造船疑獄では主任検事となる。武州鉄道汚職事件、田中彰治代議士のいわゆる黒い霧事件、日通事件と多くの特捜検事を育て、『東京地検特捜部生みの親』と呼ばれ、また鬼検事とも呼ばれた。
〈「どうして私が鬼なんでしょうね」
特捜のモト鬼は驚くほど柔和な表情をさらに崩しながら、そういって笑った。
あるいは、彼は鬼というより地獄へ堕ちてきた亡者の群れの前に立つ閻魔であったのかもしれない〉(「週刊文春」昭和五十一年=一九七六年十月二十八日号 沢木耕太郎「モト鬼」より)
昭和五十七年(一九八二年)没。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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