獅子文六(本名 岩田豊雄)は明治二十六年(一八九三年)生まれ。小説家、劇作家、演出家として活躍した。昭和十二年 (一九三七年)、岸田國士、久保田万太郎らと劇団文学座を創立した。
〈「文学座」を命名したのは、獅子文六である。文学座は戦前、文六によって生まれ、戦後、杉村(春子)によって大きく育った〉(牧村健一郎著「獅子文六の二つの昭和」より)
戦後、小説「海軍」で戦争協力作家の仮指定を受け、あやうく公職追放になりかけたが、関係者の奔走もあって、指定はまぬかれた。その後、「主婦の友」に自伝的小説「娘と私」を連載。さらに、「週刊朝日」を舞台に、株の世界を描いた「大番」を連載し、絶大な人気を博した。
「文藝春秋」昭和三十四年(一九五九年)七月号に、「花形作家十人選挙」なる特集記事とグラビアがあり、そのひとりに名を連ねた。六人の評論家がそれぞれ十名ずつ選んで投票した企画である。侃々諤々の議論のすえに決まったものだが、ちなみに、他の九人は、満票の井上靖をはじめ、吉川英治、石川達三、谷崎潤一郎、舟橋聖一、丹羽文雄、川端康成、三島由紀夫、伊藤整となっている。獅子文六は四票を獲得した。写真はこのとき撮影されたもの。昭和四十四年没。
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