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財界荒法師とうたわれた土光敏夫の清廉

財界荒法師とうたわれた土光敏夫の清廉

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 土光敏夫は明治二十九年(一八九六年)生まれ。大企業への不信が強く叫ばれた昭和四十九年(一九七四年)に経団連会長となる。

〈これまでずいぶんと“損な役回り”を演じ続けてきたようだ。もっとも、それだからこそ、「政策には口を出すが、政治には口を出さん」を旗印に、独禁法改正案に待ったをかけ、自民党への政治献金については国民協会と一線を画すと声明するなど、“荒法師”の異名にふさわしい思い切った行動がとれたとみることもできよう〉(「文藝春秋」昭和五十二年七月号)

 造船疑獄事件で佐藤栄作や池田勇人ら政治家への贈賄を疑われた時、事情聴取に行った関係者が土光氏の家を見て、あまりに質素なので驚いたという。

〈中に入って夫人に事を告げると、出かけたばかりだというので、これは逃げられたかと思って通りに出て車を探したら、バス停でバスを待っていた。社長だというのに専用車も使わない人でした。経団連にいたときも湘南からの電車通勤で有名でしたね。とにかく、贈賄疑惑の一件も、もちろん立件はされなかった。苦労人で、裏表をよく心得ている人でした〉(中曽根康弘著「天地有情」より)

 後に第二臨調の会長として、行政改革の旗を振り続けた。昭和六十三年没。

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