福田恆存は、大正元年(一九一二年)生まれ。評論家、作家、劇作家。進歩主義的な平和論を批判した保守派の論客として知られ、シェークスピア劇の翻訳、演出でも知られる。
〈人ぎらいなところがある。それは江戸ッ子の潔癖さと、つねに正統なものをめざす姿勢のしからしむるところだろう。評論にも劇作にも演出にも、その姿勢は貫かれている。以前大岡昇平、獅子文六両氏にゴルフに誘われたが「相手が要る」のですぐやめてしまった。十年前から渡辺幸吉五段に日置流の弓を教わっている。芝居の演出のときは東京泊まりでめったに巻藁(的)の前には立たないが、たまにやると「夏は蚊、冬は寒さに悩まされ」ても、やはり心身ともにすこぶる爽快という〉(「文藝春秋」昭和五十一年=一九七六年十月号)
弓と並んで書にも傾倒したが、ともに「一人で出来るところがいい」という。