インタビューほか

京都の裏支配者“白足袋族”の実態

「本の話」編集部

『回廊の陰翳』 (広川純 著)

──『回廊の陰翳』は冒頭でK宗の本山に勤務する若い僧侶が謎の水死を遂げ、その親友のお坊さんが真相を追究します。一方、水死事件の捜査をしている刑事のもとに、本山に安置されているはずの国宝級の仏像が不正に不動産開発会社の社長に売却されたという匿名の告発が舞い込みます。物語は素人探偵である若き僧侶の探索と、京都の所轄の刑事による捜査が同時並行で進んでいきます。

広川  当初は被害者の親友の坊さんだけを探偵役にするつもりで書き始めたのですが、なにぶん素人に殺人事件や巨大教団の闇を探索させるというのは無理があり、荒唐無稽になってしまう。そこで捜査のプロである刑事を持ってきて、二つの方向から事件を調べていくという構成にしました。

──作中には巨大宗派の裏側や、いまお寺・僧侶が置かれている状況などが詳しく描かれていますが、これらはどのように取材されたのでしょうか。

広川  宗派やお寺の実態については何人かのお坊さんから話を聞いたりしましたが、あまりまともに尋ねるわけにもいかなかったので、ざっとさわりだけ聞いて、あとは文献で調べました。いろいろな宗派の過去のスキャンダルなども調べましたが、執筆に当たっては作中のK宗が実在の宗派に似てしまわないよう注意しました。ですから、決して特定の宗派をモデルにしたわけではありません。

  教義についても、あまり詳しく書いてしまうとどこかの宗派のことだと勘違いされてしまうので、かなり削り込んで仏教の原点に近いかたちで書くようにしました。もともとのブッダ、つまりお釈迦様の教えは、いま我々が存在するこの世界でいかに生きていくかということで、来世に極楽に行けるとか、お寺にお参りすればご利益があるなどといったことは一言も言っていません。むしろそういうものに惑わされずに生きることを説いています。

  ところが、現実ははなはだ生臭いわけでして(笑)。お寺や宗派といっても人間たちが作ったひとつの組織に過ぎないので、善もあれば悪もあるのはいたしかたないところでしょうね。

──作中では巨大宗派の幹部たちの不正、汚職を追及する警察の知能犯捜査が緻密に描かれています。こちらもかなり取材されたのではないですか。

広川  警察の捜査については、幸いなことに刑事に何人か知り合いがいまして、一課、二課、四課、鑑識などいろいろな現場の話を聞くことができました。

回廊の陰翳
広川 純・著

定価:1750円(税込) 発売日:2010年01月28日

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