インタビューほか

京都の裏支配者“白足袋族”の実態

「本の話」編集部

『回廊の陰翳』 (広川純 著)

──刑事たちの張込みや尾行など、捜査のテクニックも詳しく描かれていますね。

広川  刑事たちの話を聞くにつけ、警察捜査も私がやっていた保険調査も、基本的には同じ方法論で成り立っていると思いました。作中に「刑事の引き出し」という言葉が出てきます。これは捜査の過程でわからないことが出てきたときに、誰に聞けばわかるのか、情報や知識を提供してくれる協力者をストックしておくということです。これは保険調査でもまったく同じことが言えます。

  また、張込みや尾行といったテクニックも同様で、一般の人は尾行というと相手から距離をおいて電信柱の陰に隠れながら、といったイメージを持っているようですが、現実には相手はまさか自分が尾行されているとは夢にも思っていないという状況がほとんどですので、同行者との会話が聞こえるくらいすぐ後ろにぴったりと張りついていることが多いのです。

──『一応の推定』で清張賞を受賞されたとき、「清張を髣髴(ほうふつ)とさせる作風」と評されましたが、『回廊の陰翳』の警察捜査のリアルな描写は、まさに「清張ばり」ですね。

広川  清張さんの作品は大好きですが、自分ではことさらに清張さんの作風に近づけようというつもりはないんです。ただ、地味でもいいからできるだけ現実に近づけたい、リアリティに忠実に描きたいと思っているだけで。ですが、現実の張込みはまさに清張さんの「張込み」さながらの地味な作業なんですよ(笑)。

──それにしましても、前作から三年半。刊行にこぎつけるまでずいぶん時間がかかりましたね。

広川  まことに面目ない話ですが、デビュー作の『一応の推定』を書き上げて保険調査員を辞めたので、いわば転職したようなもので、しばらくゆっくりしてから次回作に取り掛かろうと思ってしまったのが間違いでした(苦笑)。ぶらぶらしているのにもすぐに飽きるだろうと思ったのですが、気がついたらあっという間に一年が過ぎてしまいました。あわててぬるま湯から飛び出したのですが、テーマに仏教という奥の深い世界を据えてしまったために、付け焼刃ではとても歯が立たず、いろいろと勉強しているうちにさらに時間が過ぎてしまいました。京都は文字通り石を投げれば坊主に当たるというくらい僧侶がたくさん暮らしていますし、各宗派の総本山も集中していますから、知っているつもりになっていたのですが、いざ小説を書くとなると、わからないことがどんどん出てくるものでして。

回廊の陰翳
広川 純・著

定価:1750円(税込) 発売日:2010年01月28日

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