大学生や、若い社会人に講演をするとき、私はこう話しています。
「みなさんが生きるのは、つらい時代です。就職活動はいっそう厳しくなるし、ようやく入社できても、給料は横ばい、むしろ下がるかもしれない。
なぜなら、日本の置かれた国際関係が非常に厳しく、あなたたち個人の努力によって解決するには限界があるからです」
みな暗い顔になり、どうすれば、日本と私たちが生きのびられるのか教えてほしい、と尋ねられます。
これまでの本でも、こうした専門的なことをわかりやすく書いてきたつもりですが、「ちょっと文章が難しい」「中学生の息子や娘にも読めるように書いてもらえないか」と注文を受けることがあります。そこで今回は、思い切って語り下しで、わかりやすい本を作ることにしました。
まず、日本をとりまく国際環境とはどんなものか。私は「新・帝国主義」の時代と呼んでいます。
いま、国際社会のゲームのルールは、19世紀末から20世紀の帝国主義に似てきています。植民地分割をめぐって列強が戦争をしていた頃と同じく、「食うか、食われるか」の弱肉強食を原理とします。
帝国主義国はまず、自国の利益だけを最大限に主張し、相手国が怯み、国際社会も黙っていると、理不尽なことでもごり押ししていく。尖閣諸島の領有権の問題を見ればわかるように、こういうことを今やっているのが、中国です。
しかし、国際社会から「やりすぎじゃないか」と顰蹙(ひんしゅく)を買い、相手国も必死になって抵抗すると、帝国主義国は国際協調に転じます。なにも心を入れ替えたからではない。やりすぎると諸外国の反発を食って損をするから、妥協したまでです。
日本人は「帝国主義」を悪だと考え、戦前の遺物のように思っていますが、はたしてそうでしょうか。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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