2016.04.20 別冊文藝春秋

1984年の台湾と現代のデトロイト、少年たちを弄ぶ運命の行方は――。『流』を経て生まれた、圧倒的青春小説!

文: 東山 彰良

東山彰良「僕が殺した人と僕を殺した人」

 サックマンはだれなのか?

 簡単に言ってしまえば、その謎をめぐる青春小説である。二〇一五年、全米を震撼させた連続殺人鬼がデトロイトで逮捕される。殺害した少年たちをずだ袋に詰めて遺棄していたことから、連邦捜査局は犯人に“サックマン”という渾名をつけた。物語は、ひとりの男がこのサックマンと面会するためにデトロイトを訪れる場面から始まる。真冬のモータウン。荒んだ街並みを眺めながら、彼の想いはいつしか三十年前に飛ぶ。台湾で過ごした少年時代に、彼はサックマンを知っていたのだ。

 時が変わって一九八四年の台湾。舞台となるのは『流』でも描いた私の故郷、台北は廣州街である。四人の少年たちがそれぞれの問題を抱えながらも、この街でたくましく暮らしている。つまらない喧嘩で命を落とした兄を持つユン、牛肉麺屋のアガンと弟のダーダー、喧嘩っ早いが正義感の強いジェイ――十三歳の彼らがままならない人生に痛めつけられながらも友情を育み、そして壊れてゆくさまを描いた。

『流』の二番煎じだとはゆめゆめ思うことなかれ。オースターの『ムーン・パレス』と『偶然の音楽』はポジとネガの関係にあると私は思っているが、もし『流』をポジだとすれば、この『僕が殺した人と~』はネガということになるだろう。

 四人の少年たちのいったいだれが三十年後に連続殺人鬼となるのか? 光が強ければ強いほど影もいっそう濃くなる。ありきたりで陳腐だが、この作品で私が心掛けたのは、そのようなことである。

「別冊文藝春秋 電子版7号」より連載開始

別冊文藝春秋 電子版7号(通巻323号/2016年5月号)

定価:※各書店サイトで確認してください
発売日:2016年04月20日

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