多くの子どもたちに愛唱される「ぞうさん」「一ねんせいに なったら」「やぎさん ゆうびん」「ふしぎな ポケット」の作詞で知られる詩人、まど・みちおは、明治四十二年(一九〇九年)、山口・徳山に生まれた。小学校四年のとき台湾に渡り、太平洋戦争に召集される三十三歳までを過ごす。
昭和九年(一九三四年)、台北から雑誌「コドモノクニ」に投稿した童謡が、北原白秋によって特選にえらばれる。以来、詩作は八十年近くに及んだ。
昭和四十三年、第一詩集『てんぷらぴりぴり』で野間児童文芸賞を、平成五年(一九九三年)には、芸術選奨文部大臣賞を受賞。平成四年、詩集『どうぶつたち』が美智子皇后の手によって英訳され、日米で同時発売された。平成六年には、日本人初となる国際アンデルセン賞作家賞を受ける。
八十四歳のとき、代表作「ぞうさん」(昭和二十六年発表)について、こう語っている。
〈鼻の長くない者から、ひとり鼻の長い子象が『お前は鼻が長いね』と言われれば、子象は『自分だけが不格好なのかな』と思い悩むのが普通です。けれど、子象はまるで褒められたかのように喜んで、『かあさんも長い』と嬉しそうに言う。それは象が象として生かされているのを喜んでいるからです〉(「文藝春秋」平成六年三月号)
写真はこのとき、上野動物園で撮影されたものである。
平成二十一年には、満百歳を迎えるにあたり二冊の新作詩集を上梓するなど、表現への思いは終生かわらなかった。平成二十六年二月二十八日、百四歳の生涯を閉じる。遺された詩は、二千篇を越えるという。
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