「週刊文春」では、昭和三十八年(一九六三年)新年号から、「私はこれになりたかった」というグラビア企画で、多数の著名人に登場願っていた。
「好きです、ヨシコさん」のセリフと独特のしぐさでテレビ興隆期に圧倒的な人気を博した落語家、初代林家三平(大正十四年=一九二五年生まれ)がなりたかったのは、将軍だった。
〈十九年前、敗戦の御詔勅をきいて男泣きに泣きました。その時の階級章はポツダム兵長でした。閲兵式の時に馬にまたがった大将の勇姿を遥か遠くから捧げ銃で羨望の瞳でみつめました。僕は将軍になった夢を乙種幹部候補生になった千葉県の兵営でよくみました。本日、その希望が自衛隊の将軍、昔の陸軍中将でかなえられました。市ガ谷の営庭をこれで歩いていたら兵隊さん? があわてて、敬礼して次にニッコリ笑いました。僕は思わず「どうもスイマセン」といいました。以上報告終り〉(「週刊文春」昭和三十九年=一九六四年五月十一日号)
制服に身を包み敬礼する姿は、「昭和の爆笑王」とは違う一面を見せてくれた。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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