最近は原稿用紙に手書きで作品を執筆する作家はめっきり減ってしまい、書斎の風景もすっかり変わってしまった。かつては作家の仕事場を撮影する企画は数多くなされたが、最近ではあまり見かけなくなったようだ。
舟橋聖一の仕事場は完璧なまでに整理整頓されていた。
〈舟橋聖一氏の書斎のよく整頓されているのには驚く。いくつも控えの間のついた大廣間のまんなかにデンと机をすえ、つぎの間には編集者どもを待機させるために、料亭にあるような大机がおいてある。
隣室はライブラリーになっていて、そこには萬巻の書がそろっている。それも電気掃除機か何かで毎日掃除させているとみえて、チリひとつないといつた感じだ〉(〈別冊文藝春秋〉昭和三十二年=一九五七年十月号)
舟橋聖一は明治三十七年(一九〇四年)生まれ。幕末の大老井伊直弼を主人公にした「花の生涯」はNHK大河ドラマ第一作の原作となった。昭和五十一年(一九七六年)没
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