石井桃子は明治四十一年(一九〇七年)生まれの児童文学作家・翻訳家。写真は井の頭公園にて撮影された、〈私の散歩道〉というタイトルのグラビアである。
〈幼いころからの友人には、いつまでも幼な顔がついてまわるように、私は景色にも思い出をダブらせてしまう。荻窪、吉祥寺へんの風景には、戦争まえのたのしさがしみついていて、いまも私はそこに田んぼや疎林や小川を考えがちだ、じっさいはもう、公団住宅や煙突になってしまっているのに。
静かな木立ちにぶつかると、また私は二十五年若がえって、死んだ友だちとそこを散歩する〉(「別册文藝春秋」昭和三十四年=一九五九年二月号)
石井桃子は文藝春秋、新潮社、岩波書店に勤務し、昭和二十ニ年に上梓した「ノンちゃん雲に乗る」がベストセラーとなる。また、「クマのプーさん」シリーズや「ピーターラビット」の翻訳を手がけ、児童文学の第一人者となった。平成二十年(二〇〇八年)没。
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