- 2012.12.19
- 書評
戦略戦術から選手の育成、クラブ経営まで
サッカーを考えるテレビ番組の挑戦
文:加固 敏彦 (テレビ東京 FOOT×BRAINプロデューサー)
『フット×ブレインの思考法 日本のサッカーを強くする25の視点』 (テレビ東京 FOOT×BRAINプロジェクト 編)
ジャンル :
#趣味・実用
テレビ番組の制作現場に立つと、サッカーというスポーツが持つ力の大きさ、そして、それを表現するための切り口の多さを実感します。
考えるサッカー番組『FOOT×BRAIN(フットブレイン)』(テレビ東京系・毎週土曜よる11時5分~)が第1回の放送を迎えたのは、2011年4月2日。'12年12月22日の放送で通算90回を迎えますが、90もの視点から切り取ってみても、サッカーというスポーツの“切り口”は尽きません。おそらくその理由は、勝利するため、あるいはゴールを奪うための答えが無数にあるというサッカーそのものの魅力にあるのでしょう。つまり、それぞれが自由な意見を持ち、それを語り合うことができるからこそ、サッカーは世界中で多くの人に愛されているのだと思います。
番組の制作決定に際して私たちが持っていたのも「番組を通じて意見を発信したい」という多くの人の思いに他なりません。とはいえ、ただ世界のサッカー情報を発信するだけでは新たな意見は生まれません。そこで私たちがコンセプトとしたのは、今までにない新しい手法で表現し、サッカーファンだけでなくすべての人々のライフスタイルにヒントを与えるような番組を作ること。そうした発想から、『FOOT×BRAIN』は既存のサッカー番組にない“教養トークバラエティ”として動き始めました。
俳優の勝村政信さんとフリーアナウンサーの杉崎美香さんが司会を務める番組では、「日本のサッカーを強くするヒント」を探る試みを続けています。番組のキーワードである“ブレイン(頭脳)”と称してゲストに招いているのは、サッカーの主役である選手はもちろん、監督やレフェリー、スカウトや通訳、時には脳科学者や統計学者などあらゆるジャンルのスペシャリストたち。サッカーの現場に立つ人々は、どのような視点を持ってサッカーと向き合っているのか。あるいは、脳科学や統計学、民俗学や経営学の専門家から見たサッカーの魅力とは――。あらゆる角度からサッカーを考える試みには、今まで気付かなかったサッカーの魅力、そして「日本サッカーを強くするためのヒント」が隠されていると感じています。
また、それぞれのジャンルにおけるスペシャリストの言葉には、サッカーという枠組みを超えて人々の心を動かす不思議な力があります。つまり、サッカーを深く理解しようとする試みは、人々のライフスタイルを輝かせるためのヒントにもなる。だからこそ、サッカーファンだけでなく、一人でも多くの人に“ブレイン”の言葉や考え方を届けたいという思いを抱いています。
今回、番組の内容を一冊の本にまとめることになったのも、まさにそうした思いに起因しています。私たちは、番組を通じて価値ある情報を見つけ、それを形に変えて視聴者の皆さんに届けたい。しかし、テレビ中継という形として残りにくいものだけでそれを実現するのは簡単ではありません。そこで、本という媒体にその役割を託すことにしました。
この本では約90回もの放送から厳選した25の“視点”を落とし込み、プロサッカーの舞台に携わる人と言葉を4つのジャンルに分類して紹介しています。プロサッカーという舞台でピッチに立って「戦う人」、それをサポートする「支える人」、さらに親や指導者、経営者といった「育てる人」、そして最後に、日本サッカーの成長を「見守る人」。それぞれの視点と言葉は、日本サッカーの“今”を知る証言として、また、手にとってくださった人のライフスタイルを彩るツールとなるはずです。そして何より、番組を本で表現するというこの試みが、「日本のサッカーを強くする」ための一つのきっかけになることを期待します。
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