書評

「かわいそう」の神髄に迫る

文: 東 直子 (歌人・小説家)

『かわいそうだね?』 (綿矢りさ 著)

 同時収録の『亜美ちゃんは美人』も、すこぶるおもしろい。

 美人で誰からも愛され、一目置かれる亜美ちゃんの親友さかきちゃんの目線で描かれる、奇妙で力強い女同士の友情物語である。

 これを読んだとき、私は、そうか、そういうことだったのか、と思わず声を上げそうになった。

 とってもきれいで性格もよい、かわいい人が、どうして、なぜ、この人と結婚されるのでしょうか? と思ってしまったことが何度もあったからである。そしてそのことを、どうしてだろう、と折節に考え、私がかわいいなあ、と密かに思っていた女性が、おやおや? と思う人と結びつくたびに、やはりそうきたか……と、謎が解けないままにその事例を遠くで受け入れることしかできないでいた。その謎が、解き明かされたのだ。

 亜美ちゃんとさかきちゃんが高校生のころから描かれているので、前述の、形なきカースト制度の実体が、彼女たちの立ち位置から体感できる。

 こちらの読みどころは、随所に出てくる亜美ちゃんの美人ぶりの描写だろうか。

 横顔の美しい子で、高めの鼻梁(びりょう)も、ゆったり微笑(ほほえ)む唇も、彫刻すればどこかの外国のコインになりそうな精巧な仕上がり。特に顎から首までは、すがすがしく清廉(せいれん)、少年のように引き締まった完璧なラインを描く。そのラインは細い喉から華奢(きゃしゃ)な鎖骨の浮くデコルテまで続き、胸に行き当たると、とたんにどこか懐かしい丸みをおびた、まろやかな線に生まれ変わる。

 読みながらうっとりしてしまう。身分制度が完全になくなった現代人が、容姿の優劣で新たな身分制度を作りたがるというのは、どういうことなんだろう、と思うが、ある種本能的なことなのかもしれない。

 いずれにしても綿矢りさの小説は、今という時代の新しい発見に充ちている。

かわいそうだね?
綿矢りさ・著

定価:500円+税 発売日:2013年12月04日

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