この冬は、全国的に記録的な大雪に見舞われたが、世界的な雪の研究者を紹介しよう。
中谷宇吉郎は明治三十三年(一九〇〇年)生まれ。東京帝国大学理学部物理学科に入学し、寺田寅彦の教えを受けた。昭和十一年(一九三六年)、北海道帝国大学教授のときに、大学の低温実験室において、世界で初めて人工雪の製作に成功。気象条件と、雪の結晶が形成される過程との関係を解明することに成果を挙げた。
また、師の寺田寅彦と同じく、随筆にもすぐれた才能を発揮し、科学的精神の普及、啓蒙につとめた。
〈雪の結晶は、天から送られた手紙であるということが出来る。そしてその中の文句は結晶の形及び模様という暗号で書かれているのである。その暗号を読みとく仕事が即ち人工雪の研究であるということも出来るのである〉(岩波文庫「雪」より)
昭和三十七年(一九六二年)没。