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猪木正道は軍国主義にもマルクス主義にも異議を唱えた

猪木正道は軍国主義にもマルクス主義にも異議を唱えた

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 安全保障問題の論客として知られた猪木正道は、大正三年(一九一四年)、京都市生まれ。旧制上野中学から第三高等学校を経て、東京帝国大学経済学部に入学。河合栄治郎に師事し、軍国主義に批判的な立場に共鳴した。戦後の昭和二十四年(一九四九年)、京都大学法学部教授に就任する。

 戦後は反軍国主義的な思想が蔓延していた思想界にあって、非武装中立論の空想性を厳しく指摘した。また共産主義の非人間的な独裁制に異議を唱え、マルクス主義を批判した。昭和四十五年、当時の中曽根康弘防衛庁長官の要請に、深く悩んだ末に応じて、第三代防衛大学校校長に就任する。

 同年十一月、三島由紀夫が防衛庁に乱入して割腹自殺を図る事件が起きるが、その事後処理において、落ち着いて学内の沈静化を計った。

<自衛隊のような国を守る実力組織には、右の国家主義的な極論に弱いところがある。それだけに作家の三島由紀夫が自衛隊員にクーデターを呼びかけ、割腹自殺した事件は不気味であった。その時、先生は朗々と三島の主張の誤りを論じて、自衛隊を感染から守った>(朝日新聞平成二十四年=二〇一二年十一月十三日付け「言葉に強さ 戦う自由主義者 猪木正道さんを悼む」五百旗頭真より)

 民社党の論客として活動したが、大平正芳政権では、「総合安全保障研究グループ」の座長を務め、安全保障問題でも、大きな発言力を持った。

 平成二十四年十一月没。写真は昭和五十年撮影。

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