- 2013.07.18
- 書評
日本企業をまるごと“下請け化”させた植民地経営
文:後藤 直義 ,文:森川 潤 (『週刊ダイヤモンド』記者)
『アップル帝国の正体』 (後藤直義・森川潤 著)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
アップルに映し出された日本
本書では、カリスマ創業者だった故スティーブ・ジョブズの輝きの陰でこれまで明らかにならなかった、アップルという巨大企業の獰猛な経営の舞台裏を、かつて家電大国として世界に名を轟かせた日本の現状から描いた。
内容は大きく6章構成。「家電」「流通・量販」「音楽」「通信キャリア」などの日本の産業が、アップルという企業の出現によりいかに既存の競争ルールを覆されていったかを、多くの匿名インタビューに基づいて綴っている。
第1章では、アップルに生殺与奪の権を握られた日の丸メーカーの現状を現場ルポによって紹介した。そこからは逆説的に、ただ利益のみを追求するのではなく、徹底して素材、デザイン、機能、コストにこだわり、時に日本の地方に点在する中小メーカーまで探し当てるアップルの執念と努力が浮き彫りになってくる。
続く第2章では、アップルストアという最強の小売りチェーンによって、赤字覚悟でアップル商品を仕入れなくてはいけない家電量販店の実情を白日の下に晒した。
第3章は、アップルが音楽プレイヤーのiPodを「尖兵」として、家電のみならず、音楽というコンテンツビジネスの地盤を、老舗音楽レーベルを巻き込んでいかに揺るがせたかを赤裸々に書いた。
そして第4章は、これまで“王様”だった通信キャリアと、“家来”だった携帯電話メーカーという絶対的な上下関係を、完全に逆転させてしまったiPhoneによる下克上の内幕を描いた。iPhoneを売るも地獄、売らぬも地獄といった関係者らの生々しい証言は、これまで公に語られることがほとんどなかった。
さらにソニーを通して見た家電業界の構造変化、アップルの未来まで、取材の成果はすべて書き切った。
執筆を終えて今、アップルはまさに日本の「鏡」のような存在だと実感している。そこには日本企業の素晴らしさと同時に、多くの問題点がはっきり映り込んでいる。
最後に、高いリスクを背負い、勇気をふり絞って匿名取材に応じてくれた多くの関係者の皆様に、心から感謝を申し上げたい。(担当:後藤)
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